「副業支援でものづくりの世界を変える!」技術者に新たな可能性を提供するサービスをスタート。
2022年11月29日(火)
「製造業のための副業支援と人材・スキルマーケット monozuku/モノヅク」。2022年5月にスタートした、ものづくりのプロたちが製品やノウハウをやりとりできるプラットフォームです。これは、2021年に開かれた「新しい働き方会議」をきっかけに生まれたもの。岐阜県美濃加茂市の金型メーカー、株式会社花井金型製作所の、製造業界に新たな活気をもたらさんとする熱い思いが込められています。
■企業名:株式会社 花井金型製作所
■業種:製造業
■事業の種類:toB
■企業規模:7名
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★★☆☆
・事業開発に関して…★★★★★★☆☆☆☆
・組織開発に関して…★★★★★★☆☆☆☆
■外部人材の受け入れ経験:無し
■受入れフェーズ:自社内にスキルを持つ人材がいない
■企業の抱えている課題:ものづくりの会社の中で、「製造業従事者に特化した副業兼業マッチング」という形のないサービスを立ち上げるにあたり、担当者の右腕となるような、新規事業やサービスサイト立ち上げの経験・ノウハウがあり、かつ一緒に動いてくれる人材を必要としていた。
■外部人材の受け入れ期間:2021年10月~2022年11月現在
■受け入れ人数:2名
■企業HP:http://www.hanaikanagata.co.jp
兼業で輝く人材を、製造業界でも増やしたい
創業は1970年、岐阜県美濃加茂市で50年を超える歴史を刻む花井金型。プラスチック製品の射出成形に使われる金型製作に携わっています。遊戯台関連の製品を多く扱ってきたこともあり、得意とするのは複雑な形の樹脂製品用の金型。お客様のオーダーに応える確かな技術力があります。近年は、電気設備や雑貨などへ事業領域を広げ、より多様な金型を世に送り出しています。
そんな花井金型で、兼業人材との新たなプロジェクトに挑戦するきっかけをつくったのが、総務企画部長の花井幸平さん。2019年、社外の人材と共に事業を推し進める方法論を知り、刺激を受けたといいます。
花井さん「2019年に副業・兼業の活用に関するセミナーを受講し、その年の新しい働き方会議の様子も見させてもらいました。新たなフィールドで働きたいと集まった人たちが、みなさんキラキラしていて。副業が、従来とは違う先進的な働き方の代名詞になりつつあるのだと感じました。それと同時に、製造業で働く技術者たちには、そんな波が届いていないことを悔しくも思ったんです。どんなに高いスキルを持っていても、設備に縛られる技術者が社外に出るのは容易ではありません。なかなか自由になれない。彼らにも、兼業のようなチャンスを生み出すことができないものかと考えました」
製造業界で働く技術者たちが、広く社会とつながり、自身の技術を活かせる場をつくりたい。オンリーワンのスキルを必要とされる経験から、自信と誇りを得てほしい。ふつふつと湧き上がる思いに駆られ、花井さんは製造業に特化した、製品の売り買いや副業人材のマッチングができるプラットフォームを構想します。モノヅクの原点です。そして、この新規事業を外部の人材と共に実現しようと、プロジェクトを走らせ始めました。
2021年9月、新しい働き方会議に今度は人材を募る側として参加。花井さんの呼びかけに20代から50代の男性5名の応募がありました。このうち2名を採用。ひとりは、コンサルタントを本業とし、ECサイト立ち上げの経験などもあるAさん。もうひとりは、副業経験が豊富で、マーケティングやPRを得意とするBさん。サービスの実現に向けて必要だと考えた能力を重視して採用を決めました。ふたりとも関東在住。ミーティングはオンラインで週1回2時間。まずは4ヶ月、花井さんの構想を具現化するための議論からスタートしました。
兼業人材の経験とノウハウで、新規事業が着々と形に
プラットフォームをどうやって形にしていくか。プロジェクトをスムーズに進めていく上では、コンサルティングを専門とするAさんの力が存分に発揮されます。
花井さん「新しい働き方会議で提案した時には、クラウドファンディングの実施まで想定していました。けれど、きちんとスケジュールを組み直してみると、4ヶ月という期間では駆け足になりすぎるという話になって。現実的にやるべき作業を精査し、スケジュールを調整しながら、まずは事業計画を固めることを目指そうと3人で決めました。
Aさんの舵取りはさすがで。スケジュールの立て方だけでなく、ユーザーのペルソナの設定や、市場の分析の仕方など、今まで使ったことのない考え方のフレームワークをいくつも教わりました。新しい事業を始める時に、どう計画を立てて進めていけばいいのか。ゴールを設定して、そこに到達するためのマイルストーンを置き、状況に合わせて切ったり、増やしたりしていく。今まで自社でやってきた目標到達の仕方とは異なるやり方で、たくさんの学びや気づきをいただきました」
Aさんを中心に組んだ段取りに基づいて、類似サイトの分析による顧客ニーズの調査、ターゲットと想定される人たちへのインタビューなどを各自が進めていきました。情報を持ち寄り、意見を交わして、事業計画をブラッシュアップしていく。プラットフォームを生み出すという大きな枠の中で、サービスの内容や運営方法などが徐々に詰まっていきました。例えば、ユーザーが製品を販売するために、サイト内に決済機能が必須だと考えていましたが、Bさんからの提案で外部のサイトを利用することに。需要をはかる最初の段階においては、資金も手間も減らせるアイデアだったといいます。他社で同様の方法をとったというBさんの経験が生かされました。
「monozuku/モノヅク」の完成。進化への模索は続く
一区切りとなる4ヶ月が過ぎ、ゴールとして設定した事業計画は無事に出来上がりました。花井さんにとっては、自分の頭の中にあった構想が、どんどん骨太になりはっきりと姿が見えるようになった。あとは形にしていくのみと、次のステップへの土台ができ、加速がつきました。
花井さん「4ヶ月が終わった後も、おふたりには引き続きチームとして関わってもらえました。一緒にサービスを完成させたいと意欲も見せてくれて。2022年5月のローンチを目指して、サイトの構築やプレス向けのPRに力を入れていきました」
2022年3月以降、PR担当のBさんがリリースを投げ、新聞やウェブメディアなど各種媒体に取り上げられます。また、Bさんのアドバイスを受けて、これまでまったく縁のなかった、製造業界で発信力を持つ人とのつながりもできました。なかなか糸口がなかったところに、いろいろなアプローチの仕方を提案してもらえたおかげで、積極的に動くことができたといいます。
こうした2022年5月、「モノヅク」のサービスを開始。製品、スキル、ナレッジを販売したい技術者たちと、それを必要とする人たちとを結びつけつつ、製造業事業者や技術者に新しい働き方を提案しています。日々サービスの改善を模索し、現在は製造業者だけでなく、製品やノウハウを必要とする一般の人も利用できるものとなっています。事業の安定的な運営に向けて、試行錯誤が続けられているところです。
プロジェクトで得た学びが社内にも浸透
今回のプロジェクトは、花井金型製作所にとって、そして、花井さんにとって、どんな成果を残したのでしょう。
花井さん「オンラインで会議を行い、プロジェクトを進めたことで、金型の業務においても新しいツールを活用できるようになりました。例えば、お客様と電話でお互いに図面を見ながら話していたのが、Zoomで同じ画面を共有すれば、より正確なやりとりが可能です。この他、Aさんに教えてもらった事業の進め方、考え方に基づいて私が社内で話をすると、他の社員にも今までとは違う視点が身についているように感じます。外の文化に触れ、花井金型に新しい風が吹き出しているのはすごく良かったです。
個人的には、このプロジェクトは、始まる時からずっとワクワクしてきました。社外の方をリードするという初めての仕事に戸惑い、失敗もしましたが、それも成長につながった。私自身も多くを学ぶ機会になったと実感しています。こうした経験をもっとたくさんの製造業界の人たちにしてもらいたいです」
自らも関わり続けてきた業界を変えたいという熱意から生まれたプロジェクト。花井さんが得た学びや気づきを「モノヅク」を通して、製造業界に広げています。
■人材の条件
・関わり方:兼業/プロボノ
・頻度:週1回のオンラインミーティング
■必須条件や歓迎条件
・仕事だけど文化祭のように楽しめる、チームで楽しく取り組める(マインド)
・事業開発/サービス開発の経験があり、事業計画立案ができる方
・プラットフォームサイト(ミンネ・クリーマ等のクラフト販売)、あるいはECサイトの立ち上げ~発展・運営のノウハウをお持ちの方
・リーンキャンバスなどのフレームワークのノウハウ
■兼業者の経歴
1人目:日系コンサルティングファームに従事。ECサイト構築、新規事業・サービス開発にも携わる。主に事業開発・サービス開発のディレクションとオペレーション担当。
2人目:デジタル素材販売プラットフォーム企業に従事。アンテナの感度が高く、SNS運用やファンマーケティングにも強みを持つ。本業で新規事業にも携わる。主にマーケティング担当。
■コーディネーターの役割
スタートから約1ヶ月のミーティング同席。その間に、主にチームビルディングをサポートした。新規事業推進のノウハウをお持ちの人材がプロジェクトの舵取りを積極的に行う一方で、企業側が自身が至らぬ点があると反省する場面が多々あった。その際、企業側が本当に担う部分と、人材に任せても良い・任せた方が良い部分を、双方に話を聞きながら整理。間接的にや直接的にすり合わせを行ったことで、それ以降は自走して高いコミットメント、スピード感を保ったままプロジェクトを進めることができた。
■結果
・事業計画書の策定
・サービス名の決定「monozuku/モノヅク」
・MVP(ユーザーに必要最小限の価値を提供できるプロダクト)による実証実験の実施/モノヅクサイトのオープン:https://monozuku.wixsite.com/monozuku
・企業の登録や加工の問い合わせが全国から来ている
・「コレクターの趣味の物の製作」や「デザイナーの試作→量産」の実績経験
※「令和3年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代プロジェクト共創人材確保事業)」によりプロジェクト支援を実施
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