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時代と業界の変化に遅れはとらない。新たな広報ツールの活用法と新規顧客開拓戦略を大学生とともに模索

時代と業界の変化に遅れはとらない。新たな広報ツールの活用法と新規顧客開拓戦略を大学生とともに模索

株式会社愛起×大学生

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、大学生の生活に大きな影響を与えています。飲食店などサービス業を中心にアルバイトができなくなり、収入減に悩む人が少なくありません。こうした状況に対し、休眠預金を給与として活用し、大学生に企業で働く機会を提供する事業が実施されました。各社がリモートワークを基本にプログラムを設計。ただ仕事を用意するだけでなく、新規サービス開発や課題解決に学生とともに取り組みました。多様な雇用と挑戦のチャンスが生まれた本事業の事例を紹介します。

(本事業は、「休眠預金を活用した新型コロナウイルス対応緊急支援助成事業」として「新型コロナウイルスの影響により仕事を失った若者支援のためのコンソーシアム(一般財団法人 リープ共創基金+認定特定非営利活動法人 育て上げネット)が実施する「地域課題の解決を目指した中間的就労支援事業〜キャッシュフォーワーク手法による若者支援〜」を、特定非営利活動法人G-netが実行団体として実施したものです)

この記事でご紹介するのは、株式会社愛起の事例(募集記事はこちら)。愛起は、2019年に創業70年を迎えた食品用包装資材の卸業を営む会社です。和洋菓子店、ベーカリー、ホテルなど、東海3県中心に1000件を超える取引先へ、多種多彩な包装資材を提案・販売しています。

歴史と実績ある企業が大学生とともに目指した、企業の将来に向けた課題解決のプロジェクトとはどのような内容だったのでしょう。同社の多久田篤希取締役と大学生の安藤愛里さん(愛知淑徳大学3年)にお話を聞きました。

新たなマーケット開拓の第一歩を踏み出す

―多久田さんより、今回の休眠預金活用事業に参画した意図をお聞かせください。

多久田篤希取締役(以下、多久田): 当社は包装資材を扱うようになって50年をこえ、たくさんのお客様に長らく継続的なお取引をいただいてきました。既存顧客の方々からの信頼の厚さを自負する一方で、新規顧客開拓のあり方に変化を求められていると実感しています。従来は、既存のお客様のもとで修行した若い方が独立する際に「梱包材の相談に乗ってあげて欲しい」とご紹介をいただくのが、ご縁ができるルートのひとつでした。

けれど、近頃は修行から独立という流れでの開店が一般的とはいえなくなってきた。新規顧客を獲得するには、ご紹介とは別のルートで私たちの存在を知っていただく機会を得なければならない。加えて、対面での営業に限らず、お客様にとって手軽に商品を購入できるECサイトでの販売にも注力していく必要がある。

これらの新たなマーケット開拓のための第一歩を大学生の方とご一緒できないかと考えました。というのも、梱包資材の選定においては女性の購買意欲に訴える視点が必須。私たちがお客様に提案する上でもこの観点が欠かせません。これまで行ってきたSNSでの発信も若い目線で見直してもらえたらと。私の頭の中に「こうしてはどうか」という仮説はあったので、一緒に考えながら広報全般に携わってもらえる人を募りました。

 

―多久田さんの考えを検証しつつ、今後の広報戦略の土台づくりをしてくれる人材を必要としていたのですね。安藤さんはどんな思いで愛起さんを志望したんですか?

安藤愛里さん(以下、安藤): 実家が和菓子屋で、将来は家業を継ぐつもりなので、パッケージや梱包材に関わる仕事が経験できるのは、先々必ず役立つと思い応募しました。オンラインで仕事ができるのも魅力的でしたね。期間中、一度だけ会社と倉庫の見学、お取引先への同行をさせてもらい、それ以外はリモートで働きました。

 

―愛起さんでは、どんな形式でリモートワークを実施しましたか?

多久田 : Slackでコミュニケーションをとり、Googleドライブでデータ共有を行いました。緊急の用事があれば電話でやりとりを。外部人材の受け入れははじめてではなく、原則オンラインでも特に不自由なく事業を進められたと思います。実は今回も同時進行で3名の学生さんのインターンシップも実施しており、安藤さんには最初そちらの人たちと連携しながら業務にあたってもらいました。

 

愛起の利益につながるSNSの活用方法を検証

―では、安藤さんが取り組んだ業務について詳しくお話しいただけますか。

多久田 : 2021年2月後半にスタートし、最初の3週間はSNSでの発信を見直し、どんな情報を発信するといいか考えてもらいました。インターンの学生さんたちと一緒に動いてもらった期間です。従来もInstagram、Facebook、Twitterによる発信をしてきました。けれど、発信の意図がいまいち不明瞭なまま続けていたのが正直なところ。では、なにを目指して、どんな情報を発信するといいのか。はっきりと目標を立てて、それを達成するための投稿を考えてもらいました。ただし、たったひとつの正解があるわけではない。みなさんが考えてくださったものをまずは発信してみよう、というスタンスでしたね。

その後、安藤さんにはSNSを定期更新しながら、ECサイトの立ち上げ準備、紙媒体のダイレクトメールの作成にも携わってもらいました。ECサイトについては、委託業者との打ち合わせでデザインや構成に意見をもらったり、バナーを作成してもらったり。

それから7月には、お客様向けの展示会への出展もありました。そこでは展示用のPOPや販促物などを作成してもらっています。

▲実際に展示会で安藤さんが作成したPOPや販促物が使われました

安藤 : デザイン経験があったわけではなく、いろいろな会社の事例を参考に、販促物のデザインのポイントを勉強しながら制作しました。Instagramに投稿する画像やダイレクトメールにどんな言葉を入れると見てもらいやすくなるか。画像のどこに文字をいれるか。白黒で印刷されるダイレクトメールで気をつけることは。実践しながら私にとってもたくさんの学びや気づきがありました。

SNSの目的については、最初はフォロワーやいいねの数が増えればいいと考えていたんです。でも、投稿するうちにちょっと違うんじゃないかと思うようになりました。愛起にとって大切なのは、キレイな画像を直感的に「いいね」してもらうだけでなく、包装資材の情報を必要とする人が頭にとどめておいてくれること。投稿の保存数に注目して、「ストックしておこう」と思ってもらえる投稿を目指しました。

すると、以前はパラパラとしかつかず最高でも4件程度だった保存が、定期的に3件程度つけられ最高の数も伸びていったんです。保存のつきやすい言葉の入れ方、お客様の目を引く情報が少しずつ分かってきました。投稿の成果が数値に表れたのは嬉しかったです。

▲実際にInstagramに投稿した画像

多久田 : B to Bの事業を営む当社にとって、SNSの投稿が顧客と関係ないところで大きな反響を生んでも実はあまり売り上げには反映されないんです。むしろ少数でも包装資材の購入を検討する人にきちんと刺さらせたい。保存数にフォーカスした安藤さんの投稿は、愛起にとって、どのSNSツールをどう使っていくのがいいかを検証する有益なデータになりました。継続的に動かしてみたことで、どの程度リーチできるかも見えてきた。SNSの効果がある程度把握できたら、別の広報手段と併用する可能性も模索できる。とはいえ、コツコツとデータを取るのにはマンパワーが必要です。安藤さんにお手伝いいただき、やってみたかった実践ができ、改めて課題が整理できました

 

オンラインでの外部人材導入を円滑に行うために

―オンラインでのやりとりを基本に業務を進めてみて、印象に残ったこと、気を払ったことなどはありますか?

多久田 : 外部人材を受け入れて仕事をする際は、モチベーション高く取り組んでもらえるよう、やりがいなどの意味報酬についても常に考えています。社員でも委託業者でもなく、金銭だけでつながる関係でもない。お互いが相手を慮りながら事業を進めていく必要があります。自分本位でない関係性を築くのが大切ですよね。

 

安藤 : 広報以外の業務も、包装資材についてまとめ資料作成など。将来活かせる知識や経験が得られることばかりでした。どれもとても貴重な機会をいただけたと思っています。

 

多久田 : 和菓子屋さんを継ぐというお話を聞いていたので、なるべく役立ててもらえそうな仕事をお願いしようと意識するようになりましたね。

オンラインでの業務進行については、相手がずっと見えていない分、タスクの進捗状況の管理が大切だと感じました。安藤さんが業務過多になりかけた瞬間があって。なにがどこまで進んでいるかが把握しきれなかったんです。この問題解決はそこまで難しくはなく、Googleのスプレッドシートでリストをつくって情報共有しました。安心して効率よく業務を進めるためのノウハウも少なからず蓄積できました。

▲モニタリングの様子

―休眠預金を活用する今回の事業の枠組みはいかがでしたか?

多久田 : 当社のような中小企業にはありがたいお話しだと思います。経験のない人材活用ではあったものの、本事業では資金的な負担を考えずに社外から力を借りて普段なかなか力をかけられないことが進められました。新規開拓のための広報戦略の見直しは、やるべきことではあるものの、私一人では進められない。かといって、社員に余裕もない、外部に委託するほどのボリュームがあるわけでもない。業務を動かさなくてはいけないベストなタイミングで、二人三脚で力を貸してくださる方に来てもらえました。終始モチベーション高く、主体的な動きもしてくれた安藤さんに本当に感謝しています。