愛する地域と共感する事業で選ぶプロジェクト型兼業・プロボノweb

手作り飴の老舗に大学生がもたらした刺激。意欲的、自発的な姿勢が社員たちの変化につながった。

手作り飴の老舗に大学生がもたらした刺激。意欲的、自発的な姿勢が社員たちの変化につながった。

有限会社大丸本舗×大学生

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、大学生の生活に大きな影響を与えています。飲食店などサービス業を中心にアルバイトができなくなり、収入減に悩む人が少なくありません。こうした状況に対し、休眠預金を給与として活用し、大学生に企業で働く機会を提供する事業が実施されました。各社がリモートワークを基本にプログラムを設計。ただ仕事を用意するだけでなく、新規サービス開発や課題解決に学生とともに取り組みました。多様な雇用と挑戦のチャンスが生まれた本事業の事例を紹介します。

(本事業は、「休眠預金を活用した新型コロナウイルス対応緊急支援助成事業」として「新型コロナウイルスの影響により仕事を失った若者支援のためのコンソーシアム(一般財団法人 リープ共創基金+認定特定非営利活動法人 育て上げネット)が実施する「地域課題の解決を目指した中間的就労支援事業〜キャッシュフォーワーク手法による若者支援〜」を、特定非営利活動法人G-netが実行団体として実施したものです)

この記事では、有限会社大丸本舗の事例をご紹介します(募集記事はこちら)。色鮮やかでバラエティーに富んだ手作り飴のメーカー。名古屋市西区で大正時代に産声をあげ、創業100年を目前に控えた老舗です。職人たちが炊きあげるからこその味わいや色合いの飴の数々。熟練の技を現在に引き継ぎ、なおかつ、手に取る人に新鮮な感動を与える新しいチャレンジにも前のめりな会社です。

そんな大丸本舗が、今回の事業において大学生とどのように連携したのか、宇佐美能基社長と松本晴子さん(愛知県立芸術大学3年生)にお聞きしました。

マーケット拡大に向けた広報、デザインに挑戦

―今回の休眠預金事業への参画の意図を宇佐美社長よりお聞かせいただけますか。

宇佐美能基社長(以下、宇佐美): きっかけはもう何十年も前になりますが、私はかねてから芸術大学やデザイン系の専門学校の学生さんとコラボレーションした商品開発に関心を持ち続けてきました。2020年、中小企業に大学生が数名ずつ入って、ワークショップを通して成果物を作り上げる、名古屋市が主催するプログラムに参加しました。

そこで3名の学生さん、アドバイザーとして加わってくださったG-netの方と一緒に、新商品の原形ができるところまでしっかりと話が進みまして。またぜひこうした機会を持ちたいと考えていたところに今回のお話をいただき、参画を決めたという経緯です。実は松本さんは名古屋市の事業でご縁をいただいたメンバーのひとりで。こうして引き続きご応募してもらえたことが嬉しかったです。

 

松本晴子さん(以下、松本): 名古屋市のワークショップがひと段落した時、このまま大丸本舗さんとのつながりが切れてしまうのはすごく勿体無いなと思っていました。宇佐美さんの飴の新しい可能性を探り続ける姿勢にも、とっても接しやすいお人柄にも魅力を感じていたので。結果的に継続してデザインに携わらせてもらえるチャンスが得られたのは、私も嬉しかったです。

 

―今回の事業では、松本さんにどんなことに取り組んでもらったのでしょう?

宇佐美 : 3月から8月にかけて大きくふたつの課題に取り組んでもらいました。ひとつは、インターネット上でのマーケットの拡大。昨年Webサイトをリニューアルして通販にも力をかけたいと考えています。当社のサイトのビューを伸ばすために、市場調査なども含めてアイデアを出してもらいました。

もうひとつは、新しいブランド「日本橋大丸」立ち上げに向けたロゴやパッケージのデザイン。2018年、東京の日本橋に新しいオフィスを開設しました。メーカーとして従来の流通ルートに乗せるのとは別に、企画商品などをどんどんご提案していこうとしています。そこで「日本橋大丸」というブランドを掲げてPRをしていきたい。その顔となるデザインを提案してもらうことを課題としました。

 

前のめりな仕事ぶりが社員たちを触発

―では、こうした課題にどのように取り組んでいったか松本さんからお話いただけますか。

松本 : 取りかかった当初は、どんなデザインでどう発信すればいいのか、どちらの課題に対しても具体的なイメージが簡単には持てませんでした。最初のうちは、市場調査や同年代の意見収集など、リサーチからスタートしましたね。友達に「飴って食べる?」「どんな飴が好き?」と聞いたり、インターネットでいわゆる「Z世代」の嗜好について学んでみたり。スーパーや百貨店の陳列棚、ネットでの掲載のされ方などもいろいろ見てみて、どんな商品がヒットしているのか情報を集めました。

 

宇佐美 : リサーチでいうと、私から「名古屋駅に新しくできた人気店に行ってきて欲しい」とお願いしたことがありました。土日にはたくさんの人が並んで、商品が購入できないこともある店です。すると松本さんは「じゃあ、朝一で並んで買ってきますね!」と、こちらが頼んだ以上の動きを自発的にとってくれた。しかも、具体的に報告の仕方を指示したわけではないのに、写真を撮り、並んでいた人の年齢層をチェックするなど、自ら考えて必要な情報をおさえてきてくれました。素直にすごいなと思いましたよ。

 

松本 : ただ買って帰ってくるだけでは意味がないなと思ったんです。足を運んだ意味がきちんと出せるように考えました。

 

宇佐美 : 通販に関する業務においては、徐々に私とだけでなく担当の社員とやり取りして進めてもらえようになりました。どんどん社内に溶け込んでいってもらえた。社員たちにとっても松本さんの仕事ぶりがいい刺激になっていますよ。なにせお願いした仕事を完了するまでのスピードが速い。私を含めて触発されている人は少なくないはずです。

 

松本 : 社員のみなさんとどうコミュニケーションをとったらいいのか最初は戸惑いもありました。こちらからもっと連絡を取れていればと反省したこともあります。オンラインでSlackやライン、Zoomを使ったやり取りで仕事を進めていく中で、密な連絡や相談の大切さを実感しています。

 

宇佐美 : コミュニケーションについては社員たちにもプラスの経験になっていると思います。学生さんにお仕事をお願いするのに、どう伝えたらいいのか分からず、必要以上に堅い文章から気負いが感じられた社員もいました。Slackの文字だけでの伝達も少しずつ調整して、スムーズなものに改善されていきましたね。

 

▲コラボ商品の打ち合わせの様子

 

大学生の視点が広げる会社の可能性

―日本橋大丸関連のデザインについても聞かせてください。

松本 : 宇佐美さんからイメージをお聞きして、それを形にしていくことを繰り返しました。何度もお打ち合わせをして、宇佐美さんにも「こんな感じ」と絵を描いてもらいながら、少しずつ納得のいくものに仕上げていけたと思います。聞いた内容を上手く具現化できない時もありましたが、どうデザインに落とし込もうかと試行錯誤するのは楽しかったです。むしろ私がすぐに言葉にできない時に「こういうことだよね」と言語化していただくこともありました。学生にとって、こうして誰かとコミュニケーションを取りながらなにかを作り上げる経験は貴重です。いつも意見を正面から受け止めてくださる宇佐美さんに、とても感謝しています。

 

▲コラボ商品の原画

 

宇佐美 : お伝えしたイメージを丁寧にビジュアル化してもらえました。松本さんのアウトプットから「こういう視点もあるのか」と私が学ばせてもらったこともたくさんあります。これまで社内にはなかった感性から提案していただけました。作ってもらったロゴがリリースされれば、松本さんの作品が世に残っていくことになる。各種のメディアでも使われていきます。そんな仕事の面白さややりがいを味わってもらえていたら。

 

松本 : 大丸本舗さんには、「〇〇をやってみたい」とみんなが気軽に声をあげられる風土があるのだと感じました。こんな会社があるんだと知れたのもいい経験だと思います。

 

宇佐美 : 会社の雰囲気を学生さんに感じとってもらえるのもこうした機会の価値のひとつですね。「仕事は与えられるだけの役割でも義務でもない。自分自身で絶えず考えて動こう」。日頃から社内で発信しているメッセージが空気感として伝わったなら嬉しいです。

 

▲コラボ商品『ippuku ame』

 

―最後に、休眠預金を活用する今回の事業の枠組みはいかがでしたか?

宇佐美 : 給与面についての業務はすべて事務局側で行っていただき、当社の手間はほとんど必要ありませんでした。とてもありがたい仕組みだと思います。意欲的な学生さんと連携していくきっかけとしても非常に有益な機会です。松本さんには本当に前のめりに仕事に取り組んでもらいました。ただ短期間お手伝いしてくれる人がやってきただけでなく、継続的に面白いことをご一緒できる可能性にもワクワクできる。企業にとってそんなチャンスにもつながるのでは。