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豊田市の歴史あるビジネスホテルのピンチを救え。副業人材の多様な目線が新規事業の可能性を広げた。 | ふるさと兼業

豊田市の歴史あるビジネスホテルのピンチを救え。副業人材の多様な目線が新規事業の可能性を広げた。

豊田市の歴史あるビジネスホテルのピンチを救え。副業人材の多様な目線が新規事業の可能性を広げた。

豊田市の企業が社外の多様な人材と連携して、課題解決や新規事業促進に取り組む「豊田市副業・プロボノ人材活用プログラム」。2021年末から約3~4ヶ月にわたり、10のプロジェクトが実施されました。この記事では、「ビジネスホテルこさなぎ」を営む、株式会社こさなぎのプロジェクトを取り上げます。コロナ禍で打撃を受けた宿泊業の立て直す策を、3名の副業人材と共に実行しました。

  受入れ企業概要
■企業名:株式会社こさなぎ
■業種:旅館業 ビジネスホテルこさなぎ運営
■事業の種類:toC
■従業員数:25名
■外部人材の受け入れ経験:無し
■本プロジェクトの業務内容: コロナ禍で減少した顧客層への新たなアプローチ方法の模索と検証やアプローチ方法に沿った形で広報戦略、キャンペーンなどの打ち手を展開すること。また、新規事業として取組んでいるフィットネス事業におけるサポ―トなど。
■課題や背景: 以前は、ビジネスマンの方や長期滞在希望の団体の方に多く利用していただいていましたが、コロナ禍で移動が制限される中、出張などもなくなったことで、利用客が減少してしまった。
■外部人材の受け入れ期間:2021年12月~2022年3月
■受け入れ人数:3名
 
■企業HP:http://www.kosanagi.co.jp/

 

ビジネスホテルこさなぎは、豊田市を訪れた出張者の方をはじめ、家族連れ、スポーツ団体など、様々なお客様を迎えてきました。創業41年、市内でも歴史あるホテルです。長期滞在の方も多いため、日替わりの健康的な食事を提供し、安心して過ごせるアットホームな雰囲気を大切にしてきました。

 

副業人材とのプロジェクトを主導するのは高橋徳恵さん。名古屋市内のホテルや外資系航空会社で接客サービスの仕事に携わった後、実家であるこさなぎへ。現在は、取締役兼フロントマネージャーを務め、広報業務も一手に担っています。多様な人材の活用について知ったのは2020年。しかし、最初は縁遠いものに感じていました。

 

高橋さん「外部人材とのプロジェクトは、商品開発など明確なゴールを設定して達成できる企業がやるもので、ホテルのように現場を回し続ける業種では難しそうだと感じていました。それに、外部の人を入れると、人材の方に指示を出して、動きを管理する仕事が増えるばかりで、正直難しそうな印象でした。けれど、コーディネーターのG-netさんのから、プロジェクトの事例が思ったよりも多彩なことや、人材の方から自発的な提案もあることを聞いて、私たちにも活用できるかもしれないと思ったんです。

コロナ禍でお客様が減ってしまい、なにか手を打たなくてはと考えていたところでした。人材の方を応募するためのプロジェクトを立ち上げるにあたり、計画段階にある新たにフィットネスルームを設ける事業の進行をお手伝いしてもらうのがいいのか、それとも広報の改善に取り組んでもらうのがいいのか…。あれこれと迷いましたが、ここでもG-netさんに一緒に考えてもらえて、本業である宿泊業の立て直しを目指すプロジェクトとして募集に至りました」

 

約10名から応募があり、ここでも驚きがあったと語ります。

高橋さん「応募の段階で、人材のみなさんの熱意をひしひしと感じられました。採用前からこさなぎのウェブサイトを見て、改善案を出しくださる方や、当社と同じようにコロナ禍で痛手を受けた旅行業界の方、すでに地方のホテルの再生に携わった経験のある方など。こんなにいろいろな方に手あげてもらえるだけですごく嬉しかったです」

 

最終的に採用されたのは3名。エネルギー業界の大手企業で財務の仕事をしている30代の方。旅行業界で働き、副業の経験も豊富な40代の方。海外での新聞記者経験があり、現在は企業広報に携わる20代の方。それぞれが経験や強みを持ったメンバーです。

 

一人ひとりの強みを活かした提案が続々と

12月後半にプロジェクトが始まり、基本的には週1回の定例ミーティングを実施。期間中、メンバーが、こさなぎの現場を目にする機会もつくりました。ミーティングは、こさなぎの課題の共有からスタートし、それに対して一人ひとりなにができるかを提案していきました。

▲オンラインミーティングの様子

 

高橋さん「私がお話ししたことを踏まえてどんどん動いてもらえて、高いスキルを持った方々で凄いなと思っています。初回で課題を共有した後も、次の週には周辺のホテルの情報を整理して、より深い分析をするための資料を自ら用意してくださいました。それぞれが専門性を活かしてくださっていて、

広報の方にはこさなぎのSNSの運用をお願いしましています。これまでは、アカウントはあってもほとんど活用できていなくて。毎日の投稿するようになって、多くの方に目に留めていただけるようになりました。SNSへの反応の分析の仕方も教わっています。

旅行業界の方には、企業営業の戦略を一緒に考えていただき、直接企業営業にも行きました。まずは近隣企業の方にこさなぎをご利用いただき、魅力を知ってもらい、出張者の方への口コミを狙っています。こさなぎを知ってもらうきっかけをつくるための訴求方法を一緒に考え、その中で学ぶことも多いです。

エネルギー業界の方には、フィットネスルームの新規開設する為に必要なスケジュール管理や、各種資料や規約をつくってもらっています。自分の頭の中だけで考えていたことが、次々と資料になってできてくる。『新規事業の立ち上げ業務は、責任者の私でないと出来ない』と思っていましたが、凝り固まっていた考えも解きほぐしてもらいました」

▲人材と一緒におこなった営業活動の様子

 

副業人材の方とこさなぎで集まった時に、私たちこさなぎが大切にしている事をお話ししました。それは、なによりリピーターのお客様を大切にしたいという事です。新規事業や、新しいプランを考えても、それが古くからのお客様のご迷惑になったり、ガッカリさせるような事は避けたいと思っていました。その思いを皆さんは受け止めてくれて、その思いを共有した上で一緒にプロジェクトを進めて頂けたことが、いちばん嬉しかったことです。

 

フィットネスルーム事業に新たな光が射した

プロジェクトが進んでいく中で、当初抱いていた「ホテル業と多様な人材の活用は相性が悪いのでは」という印象は変わったといいます。

 

高橋さん「私たちのような小規模のホテルでは、現場で仕事を回すのに毎日手一杯です。なかなか作業をしたり、新しいことに取り組んだりする人員や時間の余裕がありません。かといって、今回のプロジェクトのような業務だけを任せる人を採用するのは人件費の面から難しい。ですから、広報などに特化して一緒に考え、アドバイスをしてもらえるのは、とてもメリットが大きいと実感しています。

他方で、社内の人材だけで話していると現場を意識しすぎて、新しい取り組みに対して課題を気にしすぎてしまう場面が少なくありません。その点、外部人材のみなさんは常にどうしたらできるかを前向きに提案してくれて、外部の視点から新しい気づきをたくさんもらっています。もちろん事情があってできないこともありますが、守りに入らない姿勢は社内でも見習いたいです」

 

もうひとつ、こんな成果もありました。

高橋さん「副業人材のみなさんにこさなぎに来てもらったのは、豊田市主催のビジネスプランコンテストでフィットネスルームの新規事業コンセプトについて発表する直前でした。利用客の減った団体向けの部屋を改装して、宿泊者に加え地域の方にも気軽に利用してもらえる場所にしたい。そんな考えを話すと『フィットネスルームは、今後ワーケーションやテレワークで滞在する人にとっても嬉しいものですよ!良いですね!』と言っていただけて。自信を得ると同時に事業構想が膨らみ、このアイデアを盛り込んだ発表で大賞をいただけました」

 

こうした視野の広がりもひとりで考えていては生まれなかったもの。宿泊業の立て直しのための策だけでなく、これから先のこさなぎの目指すべき姿も見えてきました。高橋さんが思い描いていた以上に、良い化学変化がいくつも起こっています。

 

※本記事はNPO法人G-netが、豊田市産業労働課「副業・兼業等人材と市内中小企業とのマッチング支援業務」の委託を受けて作成しています。また、本事業は豊田商工会議所、豊田信用金庫との包括連携協定事業として実施しています。