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まちの自動車整備工場が挑む高齢化時代の新規事業。未知の世界に飛び込むための営業ノウハウを強化。 | ふるさと兼業

まちの自動車整備工場が挑む高齢化時代の新規事業。未知の世界に飛び込むための営業ノウハウを強化。

まちの自動車整備工場が挑む高齢化時代の新規事業。未知の世界に飛び込むための営業ノウハウを強化。

豊田市の企業が社外の多様な人材と連携して、課題解決や新規事業促進に取り組む「豊田市副業・プロボノ人材活用プログラム」。2021年末から約3~4ヶ月にわたり、10のプロジェクトが実施されました。地域根ざしたカーライフサポート事業を営み続ける株式会社メイワも参加企業のひとつ。3人の副業・プロボノ人材と共に、変化する地域の実情に合わせた新事業を進めました。

  受入れ企業概要
■企業名:株式会社メイワ
■業種:自動車整備
■事業の種類:toC
■従業員数:17名
■外部人材の受け入れ経験:無し
■本プロジェクトの業務内容: 電動トライク事業を立ち上げ、普及させていくために 、”ターゲティングとニーズ調査 ・競合リサーチ ・自社の差別化ポイントやポジションの設定 ・販売戦略及び計画の策定(販売パートナー及び直販)” などに取り組んだ
■課題や背景: 近年若者の自動車離れと車検業務関連ついて各社ディーラーの顧客の囲い込みや他業種の低価格参入などで非常に厳しい状況。そこで、自動車メーカーとは一線を引いた自動車修理工場ならではの観点による新たなサービスとして輸入電気自動車(電動トライク)の提供サービスを企画
■外部人材の受け入れ期間:2021年12月~2022年3月
■受け入れ人数:3名
 
■企業HP:https://meiwa-seibi.co.jp/

 

電動トライクを高齢者の移動手段として広める

約50年にわたり、豊田市で自動車の販売、整備と自動車保険の代理店業に携わってきたメイワ。

地域に密着し、お客様の安心なカーライフを総合的にサポートし続けてきました。車検時には、100項目にわたる安全点検も実施する、丁寧な仕事ぶりに信頼を寄せてきた人がたくさんいます。けれど、近年、若者の自動車離れが進んでいるといわれたり、自動車の購入や車検の依頼をネット上で行う人が増えたりと、まちの自動車整備工場を取り巻く環境は決して易しいものではありません。

 

そんな中、2年前にグループ企業からメイワの代表に就いた長江久和さんは、高齢者向けの電動トライクの販売事業に着手することを決めました。

電動トライクは、スクーターより少し大きめの電気で動く三輪車。3人まで乗車できます。普通免許で運転可能で、価格的にも乗用車より安く、車検も車庫証明もいらない。とある経営者の会合で出会ったこの乗り物に、長江さんは新たな可能性を見出しました。

 

豊田市内でも高齢化を課題とする地域は多く、免許返納によって車に乗る人が減れば、ガソリンスタンドも姿を消していきます。とはいえ、高齢者の方々も買い物や病院へは出かけたい。ちょっとした外出のニーズに電動トライクはピッタリです。手で操作できるので、踏み間違いの事故も起こらない。ご夫婦やお友達と一緒に出掛けられれば、引きこもりの防止にもつながります。さらに、メイワのような地域密着の会社が取り扱えば、不具合があった際にもすぐに対応できる。まちに活気をもたらすツールとして、この電動トライクを取り扱おうとしているのです。この新規事業の促進が、今回のプロジェクトのテーマに。

▲現地訪問の際の写真

 

副業経験と自動車に精通した人材を採用

副業またはプロボノとしてプロジェクトに加わったのは3名の人材。いずれも30代の方です。

1人目は、東京在住の個人事業主。副業経験も豊富で、各地の自治体とのつながりもある方です。

2人目は、自動車メーカーの企画職。新規事業の立ち上げなどに携わっています。

3人目は、同じく自動車メーカーの技術職の方。

自動車に関する豊富な知識と技術を持っています。8名ほどの応募があった中で、専門性の異なるこの3名を採用しました。2021年12月中旬、まずは全員が直接顔を合わせ、電動トライクの体験試乗も実施。「面白い」「これからの時代に合いそう」などの感想が聞かれたそうです。その後は、週1回オンラインでミーティングを行い、メイワからは長江さんの他、2名の社員がプロジェクトに関わっています。

 

▲現地訪問の際の写真

 

事業ビジョンと販路開拓のプロセスをクリアに

当初は、電動トライクを中国から輸入する段取りを進め、販売へとどんどん進めていく予定でした。ところが、コロナ禍や北京五輪の影響もあり、スケジュールが遅れ気味に…。長江さんには少し焦りもあったといいますが、外部人材のみなさんから事業ビジョンを固める提案が出されました。

 

長江さん「昨年11月に名古屋の展示会に出品した際、多くの好意的な反響をいただきました。それもあって、当社としては早く売りたい気持ちでいましたが、トライク自体をなかなか思い通りに入手できず。プロジェクトもどう進めようかと考えていると、副業・プロボノ人材のみなさんから、改めてビジョンをしっかりさせましょうと言ってもらったんです。

電動トライクの販売によってメイワはどんな価値を提供したいのか。お客様は具体的にどんなニーズを持っていて、どのように電動トライクを使用するのか。色々なテーマで意見交換して、私たちの目指すビジョンを実現するためのプロセスを鮮明にしていきました」

 

副業経験が豊富な方は、議題を取りまとめるなどプロジェクトをスムーズに進行しつつ、これまでのつながりから各地の情報を提供。企画職の方は、新規事業の進め方についてのアドバイスを。技術職の方は、電動トライクのカスタマイズや整備についての意見を。3名がそれぞれの強みも活かして、事業の進行を後押ししてくれています。

 

長江さん「営業ノウハウの弱さは当社の課題でした。既存のお客様とのつながりで車検など継続的な仕事を得てきた自動車整備工場にとって、新たな商材で新たなお客様を開拓するのは未知の領域です。かといって、闇雲なウェブ広告やチラシ配りでは成果はなかなか出せない。こうした点でも、みなさんの経験と知見をお借りできるはとてもありがたいことです」

▲オンラインミーティングの様子

 

刺激的なミーティングが社内の当たり前を変えた

さらに、副業・プロボノ人材との関わりは社員の良い刺激にもなっているようです。プロジェクトのメンバーであるメイワの小笠原雅之さんはこのように語ります。

小笠原さん「みなさんの会話がハイレベルで、最初は当たり前に出てくる言葉の意味が分からないのに驚きもしました。やり取りのスピードも本当に早い。これについていけるようになったら自分も一段ステップアップできる。そのように感じて、分からなかった言葉はミーティング後に調べるなど努力もしました。電動トライクのプロジェクトで知ったことを社内にも取り入れ、会議の仕方も変えようとしています。メイワの枠から世界を広げられる機会となったので、学びや気づきを力にしていきたいです」

 

これからのメイワをリードする社員の成長にもつながった今回のプロジェクト。電動トライクの本格的な販売に向けて、販路開拓のプロセスを描き、仕組みを整え、準備を進めています。副業・プロボノ人材の知恵を得て、新規事業の展開を加速させました。

 

※本記事はNPO法人G-netが、豊田市産業労働課「副業・兼業等人材と市内中小企業とのマッチング支援業務」の委託を受けて作成しています。また、本事業は豊田商工会議所、豊田信用金庫との包括連携協定事業として実施しています。