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固定概念に捉われない発想で新商品を企画し、ものづくりの可能性をより大きなものに | ふるさと兼業

固定概念に捉われない発想で新商品を企画し、ものづくりの可能性をより大きなものに

固定概念に捉われない発想で新商品を企画し、ものづくりの可能性をより大きなものに

創業から半世紀以上の歴史を有する「三重化学工業」。ものづくりの会社として防寒手袋をはじめとした作業用手袋、生鮮食品やお弁当、ケーキなどの生菓子の配送用保冷剤、子どもやペットの身体を冷やす保冷具といった製品をつくってきました。2017年には医療機器ブランドを新たに立ち上げるなど、熟練の技術力を基盤に意欲的に新規事業を展開しています。そんな三重化学工業では近年、兼業人材の活用にも積極的です。今回は兼業人材の活用によって、どのような化学変化がもたらされてきたかを紐解きます。

  受入れ企業概要
■企業名:三重化学工業株式会社
■業種:製造業
■事業の種類:toB
■企業規模:57名
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
 ・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★★☆☆
 ・事業開発に関して★★★★★★★★☆☆
 ・組織開発に関して…★★★★★★★★☆☆
■外部人材の受け入れ経験:過去に複数回の受け入れ経験がある
■受入れフェーズ:試行錯誤する内部人材が既ににいる
■企業の抱えている課題:目まぐるしく変化する時代。生活様式までもが変化する時代。
そのなかで当社は「多様性との協働」を会社方針に『ミエラボ』を立上げて兼業人材の活躍の場を設けるなど、オープンイノベーションによる企画開発に注力している。
■外部人材の受け入れ期間:2020年11月~2021年1月
■受け入れ人数:3名
■企業HP:http://www.miekagaku.co.jp/

 

100年企業をめざすため、ものづくりの場を「開く」

これまで特徴的な製品を多数生み出してきた三重化学工業。メーカーとして確固たる地位を築いていながらも常に先を見据える姿勢を崩さない、ものづくりのトップランナーが、2020年から新たな取り組みをスタートしました。それが企業や行政、学校などが、互いの垣根を超えて力を合わせ、新たなものづくりに挑戦する「ミエラボ」です。営業部の山川輝さんは「会社の成長だけでなく地域全体の活性化にも貢献できるような仕組みをつくりたいという思いから、ミエラボは生まれました」と話します。

山川さん「既存製品のアレンジや刷新といった、いわゆる横展開の製品開発では、目まぐるしい時代の変化にいずれついていけなくなります。何十年先に続く100年企業となるためにも、まったく新しいものづくりに挑戦しないといけないという思いがありました。」

 

課題を自覚する一方で、会社という「閉じた環境」の内側から新しい突破口を見出すのは難しい。そこで思いついたのが、多様な人の知性や思い、技術で共創できるプラットフォームを用意することでした。

 

山川さん「ミエラボという自由な環境を用意し、開発に携わりたい・協力したいという人や団体があれば参加することができる。新しい働き方を活用することで、いろんな可能性をつくっていきたいと考えています」

 

人と人との縁、つながりを広げるために兼業人材を活用

ミエラボの始動を追いかけるように取り組み始めたのが、兼業人材の活用でした。兼業人材の活用はここ数年で注目を集めるようになりましたが、山川さんによると「当社では10年ほど前から社外の人材と力を合わせてきました」とのこと。例えば製品のパッケージデザインは、市内に暮らすデザイナー経験のあるママさんに制作をお願いしています。

 

 

長年培ってきた人脈をもとに、アウトソーシングという形で地元に暮らす人のスキルを生かす機会をつくってきた実績もあり、「もっと広く、さまざまな人とつながりを築いていきたい」と考えるようになるのは、自然なことでした。「中部経済産業局の担当者さまから『新しい働き方会議』について紹介してもらったとき、多くの人とマッチングできる仕組みに強く惹かれました」と山川さん。紹介があったのは、ミエラボを本格的に動かし始めようとしていたタイミング。そこで、ミエラボで実現したいと考えていた「新商品の開発プロジェクト」をテーマとして、兼業人材を募集することを決めました。

 

「先入観や固定概念のない人と、一緒になってものづくりをしてみたい」との思いから、20〜40代で製造業とは無縁な3人の人材を採用しました。地域もさまざまで、中には三重出身で現在は首都圏に暮らす人も。2020年秋から山川さんがリーダーとなり、3ヶ月間にわたるプロジェクトがスタート。これまで外部の人材を活用してきた三重化学工業ですから、兼業人材の活用もお手のもの…とはいかなかったそうです。

 


 

山川さん「企画のアイデアを出すためにも、まずは当社のことを知ってもらわないことには、と思う反面、知りすぎると思考が凝り固まってしまいそうで…。最初の1ヶ月半は試行錯誤の日々でした」

 

それでも、意欲を持って参加した兼業人材の熱量は非常に大きく、「内容の詰まった企画書が出てきたり、『これからのことを考えて、ウェブ上にミエラボのプラットフォームを作る必要があるのでは?』とウェブサイトの構成案が出てきたり。こちらが思い描いていた以上のアイデアや意見をもらえて、すごく刺激になりました。」と、当時を振り返る山川さん。山川さん自身が歩みを止めず手探りながらも前に進む姿を示していたことで、兼業人材の熱量を引き出していたのかもしれません。

 

最終的に、プロジェクトを通じてSDGsに即した環境対応型の保冷剤の企画を作り上げ、社内プレゼンを実施。「業界として他にない、未来を見据えた製品」と高く評価され、晴れて製品化が決定しました。また、ミエラボのウェブサイトもオープン。プロジェクト終了後も、製品開発やウェブサイト制作の進捗状況を報告するなど、兼業人材とのつながりは続いているそうです。

 

トライアンドエラーを重ねながら、人も会社も成長していく

ミエラボ2期目となる2021年も、兼業人材とともに進めるプロジェクトを新たに立ち上げました。今回は、ミエラボのブランディングと、SNSを活用した広報活動を通じてミエラボの認知度促進が目標です。「兼業人材活用を担う人材を社内でも育成したい」との考えから、2期目のプロジェクトリーダーは企画開発室兼ミエラボに所属する水谷啓道さんが務めることになりました。

 

水谷さん「前年の経験をもとに、兼業人材の皆さんのパフォーマンスアップを図っていきたいです。例えば前年は社会情勢を踏まえて控えていた会社見学を、キックオフミーティングとして開催しました。オンラインのみのやりとりでも十分関係性は築けることは実感できていましたが、実際に顔を合わせられることで得られる安心感もあります。」


 

2期目のプロジェクトは始動したばかり。「1期目と目標もメンバーも異なります。何が起こるかわかりませんが、メンバーのモチベーションを保ちつつ1期目と同様に試行錯誤を重ねて乗り越えていきたいです」と水谷さんも意気込みたっぷりです。

 

水谷さん「ミエラボ、そして会社そのものを知ってもらう機会をつくることは、可能性につながります。将来的に、『何か新しいことをやりたいときには、ミエラボに相談すればいい』と思ってもらえる存在になりたいですね」

 

もしかしたら今回のプロジェクトメンバーとなった兼業人材は、ミエラボで増やしていきたい「これから三重化学工業やミエラボのことを知る人」と重なる存在とも言えるでしょう。そんな人たちとともに、どんな成果が得られるのか。三重化学工業の挑戦はまだまだ続きます。

 

  プロジェクト結果概要
■人材の条件
・関わり方:兼業
・頻度:2週間に1回2時間程度のオンラインMTG
・完全リモートで実施
■必須条件や歓迎条件
・0から企画・製品開発・販売までの流れを経験したことがある人
 なお、人が考えないような独創的な発想ができる人
・世の中の困っていることにアンテナを張っている、社内ができることに結びつけられる人
■兼業者の経歴
美術大学卒業後外資系広告代理店を経て、2017年からインターネットメディアに在籍。2019年から個人事業主としても活動を開始。さまざまな業態の企業とタッグを組み、新商品・サービスの開発に取り組んでいる。
30代・男性 移動通信会社
・40代・男性 情報通信会社
■コーディネーターの役割
マッチングまでの動きに注力。打合せを通じてオープンイノベーションが加速していくためのプロジェクトを設計した。マッチング後は初回打合せに同席したが、企業と人材とで自走できる状態だったため状況確認程度に留めた。

■結果
今回のプロジェクトはすべて完全オンラインで実施した。Zoomを繋ぎリアルタイムで工場見学を行うなど初めての試みもあり、人材と試行錯誤しながらのプロジェクト進行となった。
プロジェクトの最終目標は自社技術や+αとなる技術の導入による新製品・新規事業の企画書を作ることとした。最初の1ヵ月以上は自社の取り組みや人材の考えなど意見交換をメインで行い、後半は実際に企画をいくつも出し合って、最終的には一人一企画の企画書を作成した。
企画書は三者三様の企画となり、SDGsの目標達成を目指した新製品企画や、ミエラボを当社技術の発信の場としてプラットフォーム作りの企画書が完成し、今後は実現に向けて社内で開発・設計を行う。


※「令和2年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代コア人材)」によりプロジェクト支援を実施

 
※本記事はNPO法人G-netが中部経済産業局「令和3年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代プロジェクト共創人材確保事業)」の委託を受けて作成しています。