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オンラインでシニアが集える場づくりを。大学生の挑戦がコミュニティの空気を変えた。

オンラインでシニアが集える場づくりを。大学生の挑戦がコミュニティの空気を変えた。

六月の村ソーシャルワーカーズ株式会社×大学生

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、大学生の生活に大きな影響を与えています。飲食店などサービス業を中心にアルバイトができなくなり、収入減に悩む人が少なくありません。こうした状況に対し、休眠預金を給与として活用し、大学生に企業で働く機会を提供する事業が実施されました。各社がリモートワークを基本にプログラムを設計。ただ仕事を用意するだけでなく、新規サービス開発や課題解決に学生とともに取り組みました。多様な雇用と挑戦のチャンスが生まれた本事業の事例を紹介します。

(本事業は、「休眠預金を活用した新型コロナウイルス対応緊急支援助成事業」として「新型コロナウイルスの影響により仕事を失った若者支援のためのコンソーシアム(一般財団法人 リープ共創基金+認定特定非営利活動法人 育て上げネット)が実施する「地域課題の解決を目指した中間的就労支援事業〜キャッシュフォーワーク手法による若者支援〜」を、特定非営利活動法人G-netが実行団体として実施したものです)

この記事でご紹介するのは、六月の村ソーシャルワーカーズ株式会社の事例(募集記事はこちら)。「ごちゃまぜで学ぶ ごちゃまぜで集まる ごちゃまぜで考える」を合言葉に、シニア向けのオンラインコミュニティ「六月の村」を運営しています。新型コロナウイルスの感染拡大を機にスタートした同社の事業。その展開を加速させていく中で、ふたりの大学生が活躍しました。

代表取締役の坂本那香子さん、大学生の石谷小蒔さん(創価大学3年)、砂川幸穂さん(女子栄養大学3年)にお話を聞きました。

コロナ禍で必要とされるオンラインコミュニティ運営の担い手に

―「六月の村」は2020年より活動を開始したとお聞きしました。まず坂本さんから、事業立ち上げの経緯と、今回の休眠預金活用事業への参画の意図を聞かせてください。

坂本那香子さん(以下、坂本): 新型コロナウイルスによって、高齢者向けの集いの場はなくなってしまいました。家から出られず、「感染者が何人」という暗いニュースを見続ける毎日。鬱々とした気持ちを晴らすためにもオンラインで集まれる機会をつくれないかと考えました。

「スマホにズームのアプリを入れてくださいね」。高齢者の方にとってこんな一言が最初は確かにハードルが高い。でも、ひとつハードルを超えると、みなさんオンラインでのやり取りを楽しんでくださるんです。2020年1月に取り組みが始まり、11月にはオンラインで大規模なフェスティバルを開けるほどにコミュニティが広がっていきました。コロナ以前から足腰が悪くて出歩けなかった人も、他者とつながる機会となっています。実は国内だけでなく海外からの参加者も多いんですよ。それだけたくさんのニーズがありました。

2020年12月には第2回のオンラインフェスティバルを開催することに。想像以上の勢いを感じる一方で、お手伝いしてくださる人を増やしたいと考えました。そんな折にG-netさんから休眠預金活用事業のご案内をいただいて、参画を決めました。

 

―コロナ禍において多くの人が求める取り組みだったということですね。石谷さん、砂川さんの応募動機も聞かせていただけますか。

砂川幸穂さん(以下、砂川): ふるさと兼業での応募文の「オンラインなら寝たきりでも世界とつながれる」という言葉に心惹かれました。私の祖母も施設に入所していて、オンラインのイベントに参加できたら楽しいだろうなって。それから、新型コロナの影響で休止になってしまったアルバイトもあったので。

 

石谷小蒔さん(以下、石谷): 私は、六月の村の活動だけでなく、那香子さんのご経歴にも興味が湧きました。コンサルタントとして海外勤務のご経験もあって。この人とぜひご一緒したいという思いも応募しようと決めた大きな要因です。

 

―では、具体的にどのような活動がなされたか教えてください。

坂本 : 私が長野県、小蒔さんが東京、幸穂さんが埼玉。それぞれ住む場所も違うので、直接会うことは一度もなくオンラインで進めました。毎月シフトを提出。勤務時間を定めて、各自の作業やミーティングに充ててもらいました。最初の1ヶ月は、これまでの六月の村のイベントの動画を見て理解を深めてもらったり、他のボランティアメンバーと知り合ってチーム馴染む機会を持ったり。その後、3月後半あたりから、六月の村のWebサイトづくりと、5月に予定されていたオンラインフェスティバルの広報や演出の準備に携わってもらいました。

 

石谷 : Webサイトを制作するのに使うサービス、機能、予算、参考にする事例、サイトのコンテンツなどを、那香子さんと私たちとで検討を重ねて形にしていきました。私は以前からプログラミング言語やWebサイトづくりに興味を持っていたので、とてもいいチャレンジの機会をいただきました。

▲六月の村ソーシャルワーカーズ株式会社HP

坂本 : 5月のフェスティバルまでにWebサイトをつくる非常にタイトなスケジュールだったと思います。ですが、イラストや写真もたくさん使った六月の村の雰囲気に合うものができあがって。

Webサイトに限らず、おふたりとも未経験の仕事でも「やってみます」と前向きに受けてくださるんです。こちらが「ちょっと難しいかな」と思うことも臆せずに挑戦してくれる。なまじ経験があると、つい「できる、できない」の線引きをしてしまいがちにもなるもの。そんな壁がないのはすごく良いなぁと思っていました。

 

砂川 : 私は5月のフェスに向けて、告知用のチラシやイベント内で使うバーチャル背景の制作を担当しました。もともと絵を描くのが好きで。自分の考えたデザインを実際に使ってもらえるのにやりがいを感じられました。

 

石谷 : フェスでは「離れていても一体感を生みたい」という方針のもとで演出を考えました。合言葉をつくってみんなで声を合わせる。母の日にちなんで赤いものを用意して参加する。こうした仕掛けをイベントに盛り込みました。それから、参加者のみなさんのワクワク感をかき立てたくて。大学の部活動での経験を活かしてオープニング動画をつくり、フェスの各プログラムの冒頭で流してもらいました。

 

―おふたりともご自身の興味関心とも紐付けながらチャレンジし、成果物を生み出していったのですね。

砂川 : 「やってみたい」と口にすると、みなさん快く応援してくださいます。「こうしなさい」ではなく「こうしてみたら」「あの人にも相談してみたら」と、私が考える余地を残したアドバイスをたくさんもらえるので、萎縮せずのびのびと仕事に取り組めました。

▲『シニア世代のオンラインフェス』告知用チラシ

組織の一員として広報、事業計画立案で活躍

―5月のオンラインフェスティバル以降はどのような動きになったのでしょう?

坂本 : 六月の村の運営は、いくつかの役割の異なるチームに分けて行っています。フェスの後は、おふたりも別々のチームに入り、ボランティアの方々とも連携して、それぞれが任された業務に取り組んでもらいました。徐々に私とのコミュニケーションだけでなくなり、すっかりチームの一員として馴染んでもらえたのでは。

 

砂川 : フェスでチラシづくりなど広報に関わらせてもらったこともあり、私は六月の村のPRを担当するチームに入りました。そこで任せてもらったのは、六月の村を広く知ってもらうためのチラシづくりです。団体の顔になる媒体を任せてもらえるなんて、責任重大だと緊張感もありつつ、一層気持ちを入れて取り組みました。学校の図書館でデザインの本を借りて勉強したり、地元の公共施設などに置かれているチラシを分析したり。どんな内容、デザインにすれば手に取ってもらいやすくなるのか試行錯誤しました。チラシだけでなく、メルマガの配信なども担当し、広報の仕事がどんどん面白くなっています。

 

石谷 : 私は、会社の事業計画立案などに関わるチームに入って、那香子さんと今後の事業の方向性を考える業務に携われてもらいました。経済学部なので事業資金のことなどぜひ考えてみたかった。参考になる書籍を探してプレゼンして、これまでの参加者さんのデータの分析や、ペルソナの見直しを那香子さんと一緒にしました。同じチームの方々からもアドバイスをもらい、インプットとアウトプットを実践で繰り返せたのが自分の成長につながったと思います。

 

坂本 : 六月の村の運営に関わってくださっている方の中には、会社経営者や大学教員の経験者もいます。そんな方々と一緒に仕事ができるのは、おふたりにとって素敵な環境だったのでは。

 

砂川 : 看護や介護に携わるボランティアの方もいらっしゃって、ミーティングでお話しできるのがいつも楽しみでした。仕事をさせてもらいながらいつも心が軽くなって。家族からも「最近すごく元気だね」って言われるんですよ。

▲オンラインミーティングの様子

ポジティブな挑戦は伝播する

―では最後に、六月の村にとっての今回の事業の成果をまとめていただけますでしょうか。

坂本 : Webサイトやチラシなどの広報物、事業計画など、六月の村にとって整えなくてはいけない部分を推し進めるのにおふたりとも力になってもらいました。さらに、やっぱり大学生の方がチームに入ると、スタッフも参加者さんも元気をもらえる。シニア向けのコミュニティということもあり、高齢者の方達は若い人とお話ができるのをすごく楽しみにしてくださいました。

小蒔さんと幸穂さんが初めてのことにも積極的に挑戦してくれる姿に触発された人も少なくありません。「今度、イベントで司会をやってみようかな」「オンラインに苦手意識のある友達を誘ってみようかな」といった声も耳にするようになりました。意欲が波紋のように広がっていくのを見られたと思っています。コミュニティ内に前向きにチャレンジできる空気をもたらしてくださったのは大きな変化でした

おふたりの種まきしてくださった仕事が芽を出すのはこれから。六月の村にとって大切な一歩を踏み出していただけたと思っています。