外部人材が手掛けた新サービスを次なる外部人材と共に育てる
2021年02月13日(土)
兼業社員から正社員へ。外部人材の熱意から始まったプロジェクトが、次の外部人材を迎え入れてさらに飛躍する。そんな「新しい働き方」そのものを事業成長のエンジンにしているのが、株式会社Asian Bridgeです。「社会人も主婦も誰でも使えるインターンシップマッチングサービス」で、企業の人材不足を解決しています。
■企業名:株式会社Asian Bridge
■業種:ソフトウエア、情報処理、インターネット関連、専門コンサルティング
■事業の種類:toBがメインのITサービス
■企業規模:55名
■外部人材の受け入れ経験:過去に複数回の受け入れがある
■兼業PJの業務内容:新規事業「キャリターン」の事業戦略立案
■受入れフェーズ:試行錯誤する内部人材が既にいる
■実施内容:マーケティング・広報/新規事業
■企業HP:https://asianbridge.co.jp/
「どの会社に就職・転職するということになっても、まずはインターンシップとして相性を確かめた方がいいと思ったんです」
そう語るのは、インターンシップマッチングサービス「CareeTern(キャリターン)」をはじめた、株式会社Asian Bridge北陸統括部長・松田悠さんです。
東京都に本社を置くAsian Bridgeは、代表取締役・小西 広恭さんの出身地でもある石川県金沢市に金沢LABを設立。2007年より300以上ものシステムやアプリケーションの開発などを行ない、ITノウハウを活かしながら地方の社会課題解決をしています。
会社員として単身で転勤族をしていた松田さんは、結婚を機に上京。より地域に近い、社会に貢献できることを仕事にしようとNPO法人に転職し、環境教育に携わっていました。その後、パートナーの転勤に帯同しながら働くためにフリーランスとして5年ほどライティングやコンサルティングの仕事をしました。
自身の経験もあり、転勤族の、とりわけ帯同するパートナーが孤立してしまうことへの課題を感じていたという松田さんは、そういう人たちが社会とつながりを持てる仕組みをつくろうと社団法人を立ち上げました。富山県出身の松田さん夫婦が家族そろって富山県に戻ることになったというタイミングもあり、転勤族の暮らしや仕事を支援する活動を北陸で開始したのです。その活動をきっかけに金沢大学の紹介を受け、2019年10月より参画することになったのが、Asian Bridgeでした。
松田さん「北陸の転勤族は全国的に多いと言われているのですが、私自身、地域へ移住するのに一番近い存在が転勤族だと思っていて。ITの力で北陸の社会課題を解決したいという想いを持っているAsian Bridgeだったら、大学で学んだ都市開発とITの知識も用いながら一歩先の研究もできるし、転勤族だけではない、移住などの社会課題も解決できそうだと思い、参加することを決めました。何よりも、社会課題をビジネスの力で解決したいということをきちんとかたちにしたかったのです。」
はじめは半年間の業務委託として参加したものの、どうすれば地方で課題解決をできるのか悩んでいた社長の様子を見て「まずは地方企業の課題を解決しなければ」と決意。どのようなことに困っているのかをヒアリングするためにわずか2ヶ月半で北陸の企業を40社まわりました。
松田さん「課題解決をする前に、まずは企業がどのような悩みを抱えているのかを聞きたいと思ったんです。そこで『あなたの会社で困っていることは何ですか?』と質問し続けました。すると、共通していたのが人材不足だったんです。転勤の帯同者等からも『地方で働きたい』という声が届いていたので、さまざまなマッチングができると思い、CareeTern(キャリターン)をはじめました」
人材不足に悩んでいる企業と、地方で働ける環境を探している人を結べるマッチングサービスは必要だ。そう確信した松田さんは、新しいサービスを立ち上げることを決めました。
「社会人も主婦も誰でも使えるインターンシップマッチングサービス」のキャリターンは、就職・転職においての企業のミスマッチを防げる仕組みづくりが特徴です。
まず“インターンシップ”として試用期間を設けることで、お互いのことを知れるようにしたのも、転勤に帯同し、新しい土地で働きたいと考えている人でも気軽に参加できるようにしたいと思ったから。「企業から見ても、雇用した人がどのような人かを知れる期間は必要です。企業側も応募者側もみんながハッピーになれるサービスだと思いました」と松田さんは話します。
松田さんは、キャリターンの立ち上げを機に、より力をいれようとAsian Bridgeの正社員になります。キャリターンをはじめとした事業は一歩ずつ広がりを見せました。
そうして、事業が拡大してきたキャリターンの戦略をともに練るチームメンバーを募集しようと、『新しい働き方会議2020』に参加しました。
コーディネーターのアドバイスのもと、どういう人材がほしいのか、どのようにコミットメントしてもらいたいかをワークショップで整理したと、松田さんは当時を振り返ります。
松田さん「応募したのは、地域企業のプロジェクトに関心を持ってくれる人材とキャリターンに応募してくださる方は同じようなターゲットなのではないかと思ったからです。さまざまな働き方や地方に興味がある人が多いですし、キャリターンに通ずる部分もあるはずだ、と。Asian Bridgeはキャリターンに想いを持って寄り添える人を求めていたので、『地域企業での兼業を希望する人の価値観は近いのではないか』と感じました。ワークショップでは第三者の目線があったことで整理しやすかったですし、他の事例も教えてもらえたことで参考になりました」
キャリターンの新サービス実現の戦略を一緒に企んでくれる人を募集した結果、東京や愛知などの3名とマッチングしました。現在、キャリターンは北陸を中心に活動を広げていますが、最終的には全国規模のサービスにしたいという想いがあるため、居住地は関係なく、“人柄”で選んだと松田さんは話します。選考は基本的にはオンラインで行ない、最終面接は直接会って決めました。
松田さん「マッチングしたあとは、全体の戦略管理と売上を含めた全体の計画を練る人と、営業と問い合わせ窓口、そしてユーザー目線に立つ人……とそれぞれの特性や働ける時間帯を見て業務を割り振りました。あとは、3ヶ月の間にどのような成長を遂げたいかを確認した上で決めています」
キャリターン立ち上げ当時は金沢LABに2名しかいなかった社員が、2021年2月現在は14人に。パートや業務委託など、さまざまな働き方をする人が増えました。
松田さん「多様な働き方を推奨している……というよりは、あくまで『働きたいと言ってくれている人と働くためにはどうしたらいいか』を考え、合う働き方を提示した結果が今につながっています。Asian Bridgeで働きたいと思ってくれたら応えたい。そういう気持ちでいます」
従業員と接するなかで、あらためてキャリターンの大切さを感じていると、松田さんは話します。お互いを知る期間があるからこそ、それぞれに合う働き方を整えられるし、コミュニケーションが円滑にとれるのでしょう。
キャリターンには、そんな松田さんはもちろん、ともに働いている人々の経験や想いが込められています。
松田さん「私には行く地域ごとに寄り添ってくれる人がいたので、私も誰かにとってそんな存在でありたいと思っています。みんなが暮らしやすく、働きやすくなるためにもAsian Bridgeでキャリターンを広めていきたいです」
■人材の条件
・関わり方:兼業 1名、プロボノ 1名
・頻度:8時間/週 週1回程度のMTG(オンライン)
・三者完全リモート、開始時やポイントのみ現地にてミーティング
■必須条件や歓迎条件:なし
■兼業者の経歴(略歴)
1人目:製造業にて勤務。業務として、生産技術部、工程設計、コストダウンなどを担当。ITを活用して地方創生するビジネスモデルに興味があり、プロジェクトに参加。
2人目:製造業にて勤務。制御ブレーキの製品開発や設計を担当。地方における社会課題解決に取り組んでいるAsianBridgeにとても共感し、プロジェクトに参加。
3人目:新卒から12年間、開発コンサルタントとして、開発途上国の社会問題解決を目指すODAプロジェクト(廃棄物処理、地下水開発等)に参画。その後、転職、環境分野のプロジェクト担当として案件管理他を経験。その後、1つの組織に専従せずにプロジェクト型の働き方をしていく中で、本プロジェクトへ参加。
■結果(終了済み企業のみ記載)
実施中
■コーディネーターの役割
・兼業者、プロボノ受け入れのための事務手続き、契約手続きフォロー
契約資料、保険、処遇概要、仕様確認等
・オリエンテーション 目標や目的、スケジュール決め
・ミーティング同席、ファシリテーション一部
・各マッチング者の目標、行動設定等のプロジェクトに関する調整業務を実施した。
※令和2年度「中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代コア人材)」によりプロジェクト支援を実施
※本記事はNPO法人G-netが中部経済産業局「令和2年度「中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業」(次世代コア人材)」の委託を受けて作成しています。
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