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バックボーンが異なる人材の視点を通して自社の強みを見つめ直し、魅力発信の一助に | ふるさと兼業

バックボーンが異なる人材の視点を通して自社の強みを見つめ直し、魅力発信の一助に

バックボーンが異なる人材の視点を通して自社の強みを見つめ直し、魅力発信の一助に

企業が持ち合わせる「自社の強み・魅力」。それを適切に顧客に伝えるのは、簡単そうに見えて実は難しいものです。今回紹介する株式会社美光技研も、この難しさに対して長年課題感を抱えていました。同業他社と比べて、抜きん出た技術力を持ち合わせていながらも、「もっとできることがあるのではないか」と模索し、課題解決に向け一歩を踏み出すと決めた際、ともに挑む仲間となったのが3人の兼業人材でした。

  受入れ企業概要
■企業名:株式会社 美光技研
■業種:製造業、特殊研磨加工業
■事業の種類:toB
■企業規模:9名
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
 ・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★★★★
 ・事業開発に関して★★★★★★★★★
 ・組織開発に関して…★★★★★★★★☆☆
■外部人材の受け入れ経験:無し
■受入れフェーズ:自社内にスキルを持つ人材がいない
■企業の抱えている課題:広報/ブランディング×知識/ノウハウ不足、人手不足
■企業HP:http://www.bikogiken.co.jp/

 

自社の強み、顧客が感じる魅力を理解するため、新しい「目」を求めていた

美光技研が行うのは、高い研磨技術を駆使して、金属板や樹脂板にさまざまな模様をあしらうこと。この技術は家電メーカーの製品やトラックの化粧板、建築物や自動車の内装加工などに用いられています。研磨加工を得意とする企業は全国でも数が少なく、美光技研はその中でもあしらえる模様の種類が国内トップクラスだそうです。 

▲金属に傷をつけて、様々な模様をつける

高い技術力を有していると自負する一方で、和田昇悟社長は「果たして当社は、外側からどのように見えているのだろうか」という懸念も抱いていました。

和田社長「当社の技術に着目した大手企業様からお話が来るケースもあるものの、私としては『どうやったら中小企業の方々の目に留まるか』を考えていきたい思いがありました。製品の価値醸成に役立つ技術を持っていることが、私たちの強み。製品に研磨加工を施すことで、オリジナリティを演出することも可能で、こういった付加価値を本当に必要としているのは、多くの中小企業だと思っていたからです。しかし、技術を必要とするであろう中小企業の方々が、どのように当社の強みや魅力を捉えているかは客観視しづらく、そのギャップを認識して埋めていかなければならないと考えました」

 

考えはあっても、なかなか一手を出せない状況にもありました。要因にあったのが、人員不足。美光技研の営業活動は、主に和田社長が担当し、マーケティングやブランディングといった、外部への打ち手に策を講じる余裕はなかったのです。
状況を変えたひとつのきっかけが、新型コロナウイルスの感染拡大でした。製造加工業への打撃は大きく、特に2020年4〜5月は「ひどい状態だった」と和田社長は振り返ります。

和田社長「企業としては、非常に厳しい状況に追い込まれましたね。いかにして今ある仕事を守りつつ、コストをかけず新しい仕事を開拓していけるかを考える中で、『今までと同じやり方・考え方ではいけない』『自分たちに何ができるのかを模索していかないといけない』と痛感したんです。どう行動すればいいかを考えた中で、頭に浮かんだのが、前々から気に留めていた『兼業人材の活用』でした」

中部経済産業局の事業で支援を受けられることも後押しとなり、兼業人材を受け入れることを決意した和田社長。兼業人材の受け入れはこれが初めてで、プロジェクト立ち上げから運営に至るまでを、G-netの掛川さんがサポート。兼業者と受入企業の橋渡し役として培ってきたノウハウをもとに、課題解決に臨む和田社長に伴走します。

ゴールに掲げた「自社の魅力をわかりやすく伝え、市場に売り込むための土台作り」をめざすにあたり、仲間となった3人の兼業人材。東京・大阪・名古屋在住と生活する地域が異なり、それぞれが営業・マーケティング・ブランディングなどで経験を積んできたエキスパートで、課題解決に対しても意欲的な姿勢を持つ、頼もしさの感じられる面々でした。

適切なコミュニケーションを設計しながら、兼業人材のスキルを最大化

11月下旬に開かれた初回のミーティングは美光技研本社で実施。研磨加工の技術を目で見て感じ取ってもらいました。直に顔合わせができ、互いの熱量に触れられたのも刺激となり、良いスタートダッシュが切れたと感じたそうです。

▲初回ミーティングから、活発に意見交換

 

しかし、プロジェクト始動から1ヶ月を迎える頃、熱量があるがゆえの悩みが出てきました。議論が白熱するあまり、なかなか思ったような進行が難しくなってしまったのです。「このままでは、プロジェクト期間の3ヶ月があっという間に過ぎてしまう…」と危機感を感じた和田社長。掛川さんに意見やアドバイスを仰ぎながら、ミーティングの設計を再考し、それまで週1回全員参加で行っていたのを、個別ミーティングと全体ミーティングを組み合わせる形式に改めました。

 

和田社長「ミーティングの形式を2種類に分けたことでメリハリがつき、スピード感が増しました。それと、私と兼業者が個別に話す機会を設けたことで、一対一でじっくり言葉を交わせるようになったのも良かった。お互いに深くつながれるようになりました」


▲オンラインミーティングで意見交換と進捗確認を進めた

取材時は、ちょうどプロジェクトが折り返した時期。進捗状況を伺うと、「各メンバーが着実に『やるべきこと』をクリアしてくれているところ」とのこと。例えば営業は、既存顧客が感じ取っているプライオリティ(優位性)が自社で捉えるそれと一致しているかを調査するため、アンケートを実施。マーケティングは、プレスリリースの出し方や、美光技研にとって効果的なSNSの活用方法を検討。ブランディングにおいては、美光技研のターゲットの割り出しと、潜在する顧客の洗い出しを進めているところだそうです。

▲既存顧客から回収したアンケートで自社の強みを再認識

▲活用しきれていなかったインスタグラムを兼業者の力も借りながら再始動

和田社長「3人のメンバーがそれぞれの視点で美光技研をひもときながら、必要なアクションを実行してくれています。それも、私と同じ温度感で。熱量が同じというのは本当に心強いです。『強み・価値は〇〇です』と言葉にまとめていくだけでなく、それを営業やプロモーションにどう生かしていくか、さらに言えば、プロジェクト終了後のことまで考えてくださっていて。ひとりではかなわなかったトライアンドエラーを重ねられました」

携わる一人ひとりが課題解決の「先」にあるゴールをめざす

プロジェクト終了まで残り1ヵ月。突き進んできた道のりを振り返り、「ゴールとしていた土台作り形になりつつあります」とほほ笑む和田社長は、続けて兼業人材を受け入れたことでの気づきを、次のように語りました。

 

和田社長「兼業人材の皆さんは、自分のスキルや経験を生かして課題解決に貢献したいとの思いで、プロジェクトに参画してくださっているのですが、同時に『結果を残す』ことに非常にも貪欲です。一人ひとりとのやり取りを通じて、このプロジェクトでの経験を、自分の糧にしていこうという、強い意志に触れたように思います。きっと、金銭の報酬をもらうことだけが、目的じゃないんですよね。お金とは別の『糧』を求めているから、熱量が高くて力強い。だからこそ、私自身も今回のプロジェクトを通じて、『糧』となるものをどれだけ提供できるかを、すごく考えました。これは初めての経験で、すごく新鮮でした。兼業者の皆さんに、少しでもお渡しできていたらうれしいですね」

 

  プロジェクト結果概要
■人材の条件
・関わり方:兼業、週1日~OK、リモート可
・頻度:週3~4時間
①フィールドワーク:開始時に1回実施
②定期打ち合わせ :オンラインで実施想定(1週間に1回程度)
■必須条件や歓迎条件
・技術屋の今までの挑戦にワクワクし、言語化することに面白さを感じる方
・多様な業界への納品物をもとにWEBや事例集作りなどの広報戦略を考え、共に手を動かして下さる方
・BtoBの技術営業について知見や独自目線を持っている方
■兼業者の経歴
・システム・機械系の営業経験者。高付加価値にどう寄与できるかの視点を持って、営業手法の棚卸しと美光技研にとっての提案方法について言及した。
・ブランドマーケティング施策の企画立案、特に実地での飲料のイベント企画の経験がある。商品そのものを会社の価値と紐づけて発信するための概念を整理し、お客様へ届ける具体的手法の棚卸しを行った。
・宿泊業のマーケティング・営業職の経験・ベンチャー企業の広報経験を持つ。
前職の地域の伝統工芸の魅力発信と、美光技研の世に知られていない良いものを発信していくことに共通点があると思い、応募。現在ベンチャー企業にて、コンセプトの作成、リリース作成&発信、会社HPの日々の更新作業を行っている経験から、ユーザーベースで見やすいHPへの改修や、インスタグラムを活用した発信ノウハウを会社に定着させつつ運用した。
■コーディネーターの役割
・プロジェクトの切り出し方法の検討、面接同席などをしながら経営者との相性が引き出されるような面接同席を行った。また、プロジェクト開始時は、チームビルディングのファシリテートを行った他、初めてのリモートプロジェクトのため、会議の進め方や合意形成の方法についてのアドバイスも行った。
各メンバーが自身の得意領域において提案する精度や幅がとても広く、外部のノウハウを得る意味で大変良いチームメンバーになっている。営業・ブランディング・広報発信それぞれが横断的に連携することで兼業者同士のシナジーも生まれた。

※令和2年度「中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代コア人材)」によりプロジェクト支援を実施

 
※本記事はNPO法人G-netが中部経済産業局「令和2年度「中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業」(次世代コア人材)」の委託を受けて作成しています。