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思い描いてきた販路拡大戦略が数ヶ月で形に。デザイン、ライティングの専門性をもつ兼業人材とともに | ふるさと兼業

思い描いてきた販路拡大戦略が数ヶ月で形に。デザイン、ライティングの専門性をもつ兼業人材とともに

思い描いてきた販路拡大戦略が数ヶ月で形に。デザイン、ライティングの専門性をもつ兼業人材とともに

兼業人材の専門性によって自社商品のPRを進める。この記事でご紹介するのは、トリイ株式会社の事例です。長年にわたって手がけてきた各種の染色剤を取り扱う事業。そこから生まれたオリジナル商品の「フラワーパレット」。2013年の販売開始から商品自体は進化を遂げる一方で、プロモーションに課題を抱えていました。2020年11月からスタートした3ヶ月の兼業人材活用事業。これまではできなかった情報発信ができています。

  受入れ企業概要
■企業名:株式会社 トリイ株式会社
■業種:卸売業
■事業の種類:BtoB(プロジェクトはBtoC向け)
■企業規模:資本金10,000,000円・従業員数 10名
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
 ・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★★★★
 ・事業開発に関して☆☆☆
 ・組織開発に関して…☆☆☆
■外部人材の受け入れ経験:無し
■受入れフェーズ:自社内にスキルを持つ人材がいない
■企業の抱えている課題: マーケティング・広報、
デザイン・ライティング
■企業HP:http://www.e-torii.co.jp/index.html

「やりたいけどできない」モヤモヤ解消の一手に

1948年に「鳥居染料商店」として創業してから、70年以上の歴史を重ねてきたトリイ株式会社。衣類や漁網など様々な繊維を染める最適な染色剤の提案を事業の軸としてきました。時代の流れとともに事業の幅を広げ、環境や食品に関わる薬品などの取り扱いもしています。そんな中で、35年ほど前に生まれたのが染色剤で生花を染める技術。切り花を染色剤の溶けた水に刺しておくと、茎から水が吸い上げられて花の色が徐々に変わっていく。この染色方法に使われる染色剤をB to Bで販売してきました。

2013年頃、B to Bの染色剤販売だけでなく、B to Cで売れる自社商品開発のプロジェクトが立ち上がります。そこで光が当てられたのがこの生花を染める技術。「自由研究の教材として売り出してみてはどうか?」というアドバイスを受けて、最初は学習教材としてネットで販売しました。すると、販売実績ができただけでなく、学習教材の会社や大手量販店からコラボレーションの話が持ちかけられ、商品自体もブラッシュアップされていきました。そうして形になっていったのが「フラワーパレット」。豊富なカラーバリエーションで、商品展開がされています。

▲これまでに販売されたトリイのオリジナル商品

▲フラワーパレットで染めた花。綺麗なグラデーションにもできます

こうして強みを活かした自社商品が出来上がった一方で、販路拡大に課題を抱え続けてきたと語るのは、フラワーパレット事業を担当する鳥居英子さん。
鳥居さん「花が染色剤で色を変えていく様子はすごく面白いんですよ。私自身、白い花を見つけるとついつい染めたくなってしまうほど。やってみると夢中になってもらえる商品だと思っています。写真映えもするので、SNSを利用した発信や、フラワーパレットのフォトコンテストなどをできたらいいなってずっと考えていたんです。でも、SNSを覚えようと始めてはみたもののなかなか使いこなせなくて。かといって、社内にはフラワーパレットの営業に充てられるマンパワーもない。デザインや文章のスキルに長けた人材の雇用も難しい。やりたいことはあるのにできなくてモヤモヤしてきたんです」。

こうした状況に対して紹介されたのが兼業人材の活用でした。これまで大学生のインターンシップを受け入れた経験はあったものの、兼業人材とのプロジェクトは未経験。本当に人が来てくれるのか不安もありましたが、これまで出会えなかった人材との縁を結ぶチャンスになるかもと参加を決めます。「SNSや動画によるフラワーパレットのPRを手伝ってほしい」。このプロジェクトに5名の応募がありました。ライター、デザイナー、商品企画経験者など、手を挙げてくれたのは予想以上にピッタリの人ばかりだったといいます。面接を経て最終的に、ライティング経験のあるイベント会社勤務の方、個人事業主としてデザインに携わっている方の2名を採用することに。ライターとデザイナー、どちらも普段は東京で働いている人です。2020年11月末から3ヶ月の兼業がスタートしました。

ブログ、動画、フォトコンテスト。新しいPRが次々と形に

フラワーパレットのPRプロジェクトに携わっているのは、兼業人材の2名と、社内からは鳥居英子さん、鳥居宏臣社長、SNSに詳しい若手社員の3名。プロジェクト開始時にそれぞれ西尾市を訪れてもらい、それ以降は毎週1回東京とオンラインでつないでミーティングを行っています。オンラインミーティングのほか、日常的なSNSのメッセンジャーやメールを使ったコミュニケーションも。

▲西尾市と東京をつないで会議を実施しました

 

鳥居さんたちがこのプロジェクトでやりたいことははっきりしていました。タスクとしたのは、「フラワーパレットに関する情報発信の強化」「YouTubeでの動画配信」「フォトコンテストの開催」。具体的になにをしたいかを示しながら、役割分担を決めて毎週進捗確認をしています。兼業開始1ヶ月程度で、いくつもの実績が形になりました。2020年4月を最後に更新が止まっていた自社ブログは、12月に入って週に何度も新しい記事がアップされるように。どんな記事を掲載するか、題材をミーティングで出し合い、原稿確認はメッセンジャー上で行っています。さらに、クリスマスに合わせてアレンジフラワーのフォトコンテストを開催。受賞者にはフラワーパレットと生花をセットでプレゼントしました。このコンテストのバナーはデザイナーが、案内はライターがそれぞれ制作。各々の専門性がかけ合わさって、鳥居さん念願のコンテストが実施できました。年が明けた1月には、フラワーパレットの説明動画や生花が染まっていく様子を定点カメラで撮影した動画も制作。やりたいと考えていたことが順調に実行されています。

▲ デザイナーが制作したフォトコンテストのバナー

▲Instagramに投稿されたフワラーパレットの染色方法の説明動画。

 

鳥居さん「スピーディーに物事が進んでいくのを、ビックリしながらもとても楽しめています。オンラインで東京とつないで仕事をするなんて未知の世界でしたが、チャレンジしてみるとそこまでハードルが高くはないのかなと。オンラインツールの使い方なども、NPO法人 G-netのコーディネーターの棚瀬さんがミーティングに入ってフォローしてくださるので、スムーズに対応できました」

さらに、SNSの活用法、動画編集用のアプリケーション、文章の書き方など、ふたりの専門性からの学びがたくさんあります。ライターが西尾市を訪れた際には花農家へ案内し、ブログ用の取材を行いました。そこでライターが投げかける質問は、地元にいても聞いたこともないようなものばかり。情報を集めるのにどんな視点を持つべきか参考になったそうです。

外部人材の活用で広がる事業の可能性

鳥居社長「フワラーパレットを広めるにあたり、『生花を染める』というイメージの定着がなかなか難しいんです。色のついた花を見せると造花だと思われてしまう。知れば興味を持っていただけることも多いので、そのきっかけをつくれたらと思っていました」と語るのは鳥居宏臣社長。

フワラーパレットは、これまでメディアにも度々取り上げられ、コロナ禍においては、売れ残ってしまった生花の活用方法として地元の小学校の理科の授業でも使われました。小学生たちは花が染まっていく様子を観察して楽しんだといいます。そして、今回のプロジェクトでブログの更新が頻繁になったことで、行政関係者の目に止まり、西尾市の関係者からは問い合わせもありました。フォトコンテストでも、フラワーパレットの認知度を高められたと効果を実感しています。PRが売り上げにどう反映していくか結果が出るのはこれから。とはいえ、言葉だけでなくビジュアルでフラワーパレットを紹介できるツールが増えたことなど、プラスの成果は確実に生まれています。


▲ ブログの更新頻度があがり様々な取り組みを可視化できました。

また、今回の兼業プロジェクトを経て、新たに外部人材とともに取り組みたいプロジェクトの構想も固まりました。花ではなく、服などの衣類を染めるキットを開発したい。染色剤を売るだけでなく、染色技術を伝えていくための商品を生み出したいと鳥居社長は考えています。B to Cで販売をするならSNSを使った発信は必須。今度は学生と一緒に、マーケティングも行い、商品を作り上げていく予定です。兼業人材の活用を経験したことにより、事業展開の可能性が広がっています。

▲『中部経済新聞』にプロジェクトが取り上げられました。兼業人材活用への注目が高まっています

  プロジェクト結果概要
■人材の条件
・関わり方:兼業1名・プロボノ1名
・頻度:月32時間程度(週1くらいの頻度)/週1回程度のMTG(オンライン)
・1名は初回、もう1名は中間地点で現地視察を行った

■必須条件や歓迎条件
 ・インテリアフラワー、花を飾る・楽しむことに関心のある人
 ・BtoC または雑貨等のマーケティングや販売・企画に携わった経験のある方
 ・WEBを活用した商品の販売に携わったことがある方
 ※対象となる人として以下をWEB上に記載したが、合否は、SNS運用の経験があったり、ブログ等の執筆を任せたいと思える人を採用した

■コーディネーターの役割
最初の方のミーテング時のファシリテートなど。
人材からの企業の想いへの共感が強かったため、関係構築に時間がかからなかったが、オンラインという環境やお互いに初めての挑戦ということもあり、使用する言葉や価値観など擦り合わせなどの調整をした。
※令和2年度「中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代コア人材)」によりプロジェクト支援を実施
 
※本記事はNPO法人G-netが中部経済産業局「令和2年度「中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業」(次世代コア人材)」の委託を受けて作成しています。