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社内にない視点を得て、新規事業や新たな情報発信が走り出す。まず一歩踏み出したことが変革のきっかけに。 | ふるさと兼業

社内にない視点を得て、新規事業や新たな情報発信が走り出す。まず一歩踏み出したことが変革のきっかけに。

社内にない視点を得て、新規事業や新たな情報発信が走り出す。まず一歩踏み出したことが変革のきっかけに。

企業が新たな事業に挑む際、既存のノウハウとは異なる知見が必要となる場合は少なくないでしょう。未知の領域へ一歩踏み出すため、社内で人を育てるのか、外部の協力を得るのか。副業人材の力を借りるというのも、その選択肢のひとつになり得るものです。株式会社トヨコンでは、「新しい働き方会議2022」をきっかけに、B to Cのオリジナル製品開発、認知度アップのための発信において、大きな変化が生まれつつあります。初めての副業人材とのプロジェクトのプロセスと成果を聞きました。

 

 

  受入れ企業概要
■企業名:株式会社トヨコン
■業種:物流総合商社
■事業の種類:toB
■企業規模:191名(2023年1月)
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
 ・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★★☆☆
 ・事業開発に関して…★★★★★★★★★☆
 ・組織開発に関して…★★★★★★★☆☆☆
■外部人材の受け入れ経験:無し
■受入れフェーズ:自社内にスキルを持つ人材がいない
■企業の抱えている課題:段ボールを活かした新規事業を考えているが行き詰まりを感じていた
■外部人材の受け入れ期間:2022年11月1日~2023年1月31日 その後、契約延長し継続中
■受け入れ人数:1
■企業HP:https://www.toyocongroup.co.jp/

 

 

副業人材とともに変化を加速

株式会社トヨコンは、愛知県豊川市で、お客様の物流改善につながる多彩なご提案ができる総合物流サービスを展開しています。倉庫での物品の管理、適切な梱包、包装資材の調達など、創業以来、物流の世界で事業の幅を広げ続けてきた企業です。2024年に創業60年を迎えます。
特に包装資材については、お客様のニーズに合わせたオリジナル製品の開発・設計も可能です。近年では、プラスチック素材の削減を目指し、段ボール製の包装資材を求める動きもあります。大手機器メーカーが海外輸出用に使用してきた発泡プラスチック製の緩衝材を、同社の段ボール製品に切り替えた実績もあります。SDGsが広く叫ばれる前から、プラスチックに代わる新製品開発を手がけてきました。

 

社会のニーズの変化もあり、2020年から10年先を見据えて、「SDGs達成に貢献する取り組みへの注力」「社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」「地域とつながる事業の展開」といったビジョンを掲げています。さらに、既存の枠にとらわれず、新たな事業も生み出していく。B to Bのみならず、自社のノウハウを活かしたB to Cの製品開発にも力が入れられてきました。そして、こうした動きを受けて、今回のプロジェクトにも乗り出したのです。当時、同社の採用を担当し、プロジェクトをリードした高柳さんは、副業人材採用のきっかけや狙いについてこう語ります。

 

高柳さん「ここ数年は、まさに変わり目の時期でした。働き方の改善や新規事業を形にしたい。他の業界を知っていて、社内にはない専門性を持つ人の活用も模索していました。ちょうどDXを進めていて、他分野からの転職者が活躍する姿が見られたため、外で経験を積んできた人の視点が力になると実感していました。
そんな時、コーディネーターから本事業の「新しい働き方会議」をご紹介いただき、新規事業に副業人材を入れるのもあり得るのではないかと考えました。実は、社員から「副業したい」という声も上がっていて、まずは自社で受け入れ、副業の方とのプロジェクトを体感すると同時に、今後の社内制度の参考にもなるだろうということから、参加を決めました。」

 

 

次々とアイデアが出され、できることが明確になっていく

社内だけでは生まれない視点を持った人とお客様にさらなる価値を提供したいという目標を設定し、参画者を募りました。複数名の応募があり、高柳さんが面接を実施。同社にとって初の試みだったため、副業や事業立ち上げの実績があるか否かに注目して選考しました。結果、事業企画や広報に精通した、30代の男性のKさんを採用することに。過去に副業の経験もあり、希望通りの方だったといいます。

 

高柳さん「様々な企業に関わることを楽しんでいる印象でした。当社の募集文を読み、私たちが何をしたいか理解した上で、自分がどんな力を発揮できるかも考えてくださっていたのが嬉しかったです。」

 

こうして2022年11月から翌年2月にかけて、まずは約4ヶ月のプロジェクトがスタートしました。初回はKさんが同社を訪れ、現場の様子を見て、理解を深めました。それ以降は、1、2週間に1回のペースでオンラインミーティングを実施。高柳さんだけでなく、社内で新規事業開発に関わるメンバーも参加しました。

 

まずは、事業と製品の現状を整理。例えば、同社では、梱包に使用した段ボールがおもちゃなどにトランスフォームする「トラダン」という新製品の開発も既に進められていました。使用後にオセロやサッカーゲームを作って遊べる。SDGsともつながるこのアイデアで、地元のビジネスプランコンテストの賞も獲得しました。「トラダンには作り手のどんな思いや技術が込められているのか。どんなメッセージとともに伝えていくのか」改めてコンセプトを整えました。

 

 

広報に長けたKさんからは、トラダンについてだけでなく、同社のノウハウを活かすアイデアが次々に提起されます。具体的には、スポーツやアニメとのコラボレーション、キャラクターを活用した発信など。これらの案がどのような効果を期待できるものかも示されました。自社になかった発想が多く、トヨコンとその製品を広めるために何ができるのかを知る機会になったといいます。

 

 

トヨコンオリジナルキャラクターの誕生!

2月の報告会までに、トヨコンの課題と何を仕掛けていくかがまとめられました。Kさんは、報告会後も継続して副業で関わることになり、いくつかのアイデアは、社内の提案も通って、実行に移されています。
2023年8月には、トヨコンのオリジナルキャラクターが誕生。段ボール生まれの「ぼるお」たちが、SNSでトヨコンの事業や取り組みについて紹介しています。投稿への反響は大きく、プロジェクトの成果が生まれました。

 

高柳さん「以前は「キャラクターがいるといいよね」という声はあっても、本当に必要なものかどうか、作った後にどう活用したらいいかが分かる社員がいませんでした。しかし、Kさんの助言を得て、世間話から広報の一部として現実味のある話に変わった。納得感とともに新たなチャレンジができています。」

 

加えて、Kさんを通して、新しい人とのつながりも得られました。「ぼるお」をデザインしたのは、Kさんから紹介された外部のイラストレーターです。協力者が増え、選択肢の幅も広がったと高柳さんは感じているそうです。

 

 

 

一歩踏み出し、いくつもの動きが生まれた

最後に、プロジェクト全体を振り返り、副業で外部の人材を採用する上で企業がなにを大切にするといいか尋ねると、

高柳さん「初めて副業の方を受け入れるので、不安もありました。副業をする人も、異なる環境に少なからず不安を抱いてやってくるでしょう。ですから、「ゴールはここ」と決め切らず、成果を急ぎすぎない姿勢も大切だと思います。プロジェクトが走り出せば、その人と何ができそうか自ずと分かってくるはず。まずは何か動きを起こすのが一番です。社外の人と連携しているからこそ、社員が自分とは違う視点に刺激をもらい、社内にも「やらなきゃ」という良い危機感がみられました。
また、副業の方が入ることで、そのノウハウを社員にも落とし込めると見込んでいましたが、当初の期間中にそこまで至ることは難しかったので、Kさんに引き続き関わってもらえているのはとてもありがたいです。一緒に事業を進める中で、社員がSNSの効果的な発信方法を学ぶなど、内製できる流れも作れたらと考えています。」

 

副業人材を継続的に巻き込んで事業の改革を推し進める同社。変化を求める企業にとって、社外の人材との出会いが、様々なきっかけとなることが窺える事例です。新規事業の開発、情報発信の改善など、プロジェクトでまかれたいくつもの種がどう育っていくのか楽しみです。

 

 

  プロジェクト結果概要
■人材の条件
・関わり方:副業
・頻度:週1回程度のMTG(初回は現地で顔合わせを実施、以降はオンライン)
■必須条件や歓迎条件
・スキル:新規事業開発の経験、新規事業に携わった経験(現状を活かして新たな取り組みをしたい)
・マインド:積極的に人と関わることが出来る方、趣味がある方(何かに没頭できる)
■副業者の経歴
新卒で総合広告代理店に入社以来、多くの企業のマーケティング戦略を支援。SNSを中心とした、デジタルを通しての統合的なコミュニケーション設計を得意とする。
■コーディネーターの役割
企業が抱える課題に合わせた外部人材の活用プロジェクトの提案を行った。また、プロジェクト期間は、外部人材と企業間の連絡や契約延長に関するフォローによって、スムーズな進行と継続的な関係性構築を担っていった。
■結果
部門を超えて、企業としての新規事業の方向性を整理。期間内では、新規事業を新たに作るのではなく、既に取り組んでいた新規事業をより効果的に広げていくためのマーケティング戦略の考案を進めた。具体的には、スポーツやアニメとのコラボレーション、キャラクターを活用した発信などが立案された。その後、契約期間も延長させ、企業全体のデジタルマーケティングも担うようになっていった。

※「令和4年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代プロジェクト共創人材確保事業)」によりプロジェクト支援を実施

 
※本記事はNPO法人G-netが中部経済産業局「令和5年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(副業・兼業等外部人材活用事業)」の委託を受けて作成しています。