未体験のDXにチャレンジ!知識も経験も豊富な副業人材と、オリジナルの見積書作成システムを作り上げる。
2023年02月10日(金)
デジタル技術による働き方の変革、いわゆる“DX(デジタルトランスフォーメーション)”が各業界で推し進められています。歴史と実績あるメーカーの中にも、DXによる職場改善を目指す企業が少なくありません。この記事で紹介する名北ゴム株式会社もそんな企業のひとつ。今まさに外部の人材を巻き込みながらDXへの一歩を踏み出しているところです。
■企業名:名北ゴム株式会社
■業種:製造業
■事業の種類:toB
■企業規模:160名
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★★★★
・事業開発に関して…★★★★★★★★★★
・組織開発に関して…★★★★★★★☆☆☆
■外部人材の受け入れ経験:無し
■受入れフェーズ:自社内にスキルを持つ人材がいない
■企業の抱えている課題:DX推進を会社の方針として掲げ、営業業務の見積書作成からデジタル化に着手していたが、営業社員がその業務の傍らに取り組み十分な時間を割けないと同時に、知見がないため手探りでの取り組みとなっていた。
■外部人材の受け入れ期間:2022年12月~2023年2月
■受け入れ人数:1名
■企業HP:http://www.meihoku-gum.co.jp/
社内の人材だけでは難しいDXの推進
ゴム、ウレタン、樹脂、スポンジなど、さまざまな素材から製品を生み出す名北ゴム。対応できる加工法も幅広く、自動車、家電、各種アメニティをはじめ、多種多様なものの部品製造を手がけてきました。設備面では、クリーンルームを備え、医療分野からの高い要求にも応えられます。設立から40年以上、確かな実績を残し続け、成長してきたメーカーです。
取り扱ってきた製品は2万点以上。非常に多くの品種を提案する上で、課題となっていたのが見積書の作成でした。材料費、加工費、輸送費、管理費といった要素は一定ではなく、営業が各々の経験に基づいて金額を算出してきたために、組織としての基準がなかったといいます。さらに、過去のデータを参照する際にも、適当なものを見つけるのに手間がかかり、わざわざ計算し直すような場合も少なくありませんでした。「見積書を共通のルールで作成し、データで一元管理できる仕組みがほしい」。社内のDXについても検討し、まずは見積書作成のシステムに取り掛かることを決めました。
そして、DXを外部人材とともに進めることに。プロジェクトリーダーの中家さんにその理由を聞くと…
中家さん「正直、社内には、プログラミングに長けた人材はおらず、“DX”とはなにかすら分かっていないような状態でした。デジタル分野の専門性と経験値のある人の力を借りたい。そんな思いで社外の人材とのプロジェクトを立ち上げました」
“DX推進パートナー”となり、見積書作成システムを一緒に作り上げてもらいたい。目指すゴールも、求める能力もはっきりとした募集に対して、5名が手を挙げました。いずれもプログラミングの経験がある人ばかり。そのうち3名と面談し、最終的に1名の採用者を決定しました。製造業関連の案件に携わった経験もある30代後半の男性の木暮さん。とても人柄がよく技術面でも名北ゴムの希望する人材像にマッチしていました。関東の企業で勤めており、副業でプロジェクトに参画してもらうことになります。
たった1ヶ月半で、希望通りのシステムが形に
2022年12月にプロジェクトがスタートし、初回は木暮さんに名北ゴムの職場を見てもらう機会を設けました。どのようにものづくりが行われ、今回の課題である見積書はどうやって作成されているのか。従来のオペレーションへの理解を深めつつ、中家さんたちプロジェクトメンバーの課題感やシステムのイメージを伝えました。
その後は、週1回のリモート会議を中心に、見積書作成システムの制作が進められています。名北ゴム側のニーズに対して木暮さんから提案が出され、議論をもとにプロトタイプがつくられていきました。既存の見積書を活かした新たなフォーマットの作成、材料費をデータベースにして自動計算できる仕組みの導入など。木暮さんが形にしたものを検討し、ブラッシュアップを重ねました。約1ヶ月半で実用できるレベルのシステムに。プロジェクトメンバー内だけでなく、広く社員向けのテスト使用も行い、現在は細かい改善点を抽出しているところです。短期間で成果が生まれていることに、社内での満足感も高まっているようです。プロジェクトメンバーの今井さん、代表取締役の中道さん、リーダーの中家さんは、「文句なし」と口を揃えます。
今井さん「当社の事業を理解するのは、他分野の方にとって簡単ではないと思います。ですが、木暮さんの理解力は高く、私たちがなにを必要としているかも的確に汲み取ってもらえました」
中道さん「DXについて素人だった私たちにも、とても分かりやすい提案をしてくださいます。当社の現場を話すと、『では、このツールを使うといいと思います』と、どんどんアイデアを出してもらえました。さまざまなやり方のメリット、デメリットを丁寧に説明していただけたので、判断もしやすかったです」
中家さん「これだけスピード感のある進行は、社内の人間だけではなしえません。お願いして良かったと思っています。つくっていただいたシステムを触るうちに、他の業務にも応用できるのではと考えが広がり、さらなるDXへのヒントもたくさん得られています」
“見積書作成業務の改善”というタスクを乗り越えると同時に、プロジェクトメンバーのDXへの理解が深まっています。自社に合わせてつくったシステムの利便性を体感し、さらなる業務効率化や職場改善の可能性を見出せている。副業人材とのプロジェクトが、ひとつの課題解決だけでなく、将来へとつながる有益な知識とノウハウを取り込む機会になりました。
密なコミュニケーションがプロジェクト成功の鍵
名北ゴムにとっては、初めての副業人材の受け入れ。限られた時間で目標を達するために、木暮さんとのこまめなやり取りを意識しました。週1回のオンラインミーティングに加え、改善点は随時LINEで共有。木暮さんの反応は早く、ミーティングを待たずして修正が反映されたといいます。密なコミュニケーションによって、お互いの意図を正確に伝え合うことができました。また、木暮さんも副業は初めてで、なかなか勝手が分からない中、それぞれの目線で間に入ってくれるコーディネーターの存在も大きかったと感じているそうです。
副業人材との新たなチャレンジを経て、今後の展望をどのように考えているのでしょうか。
中家さん「木暮さんは『普段はできない経験を通してスキルを高めたい』と、積極的な姿勢でプロジェクトに参加してくださいました。副業というスタイルで、ひとつの業務用システムを完成させるまで協力してもらえるのは、企業にとって本当にありがたいことだと思います。専門性を持つ方とご一緒できたおかげで、私たちが貴重な経験をできました。
今後も、一層のDXを目指していきます。今回のプロジェクトで得たノウハウの横展開も模索していきたい。自社でなにができるか、また外部人材に協力してもらうのか。これから取り組む改善の内容によって見極めていくつもりです」
DXへの一歩を踏み出した名北ゴム。システムがつくられるプロセスを経験し、次のステップへのイメージも明確なものになっています。
■人材の条件
・関わり方:副業
・頻度:週1回のMTG(オンライン)/チャットツールでの質疑と回答
■必須条件や歓迎条件
・実情に寄り添いながら、提案とレクチャーをしてくださる方
・中長期的なビジョンを描きつつ、目の前の一手を具体化し共に取り組んでいただける方
・ニッチトップなものづくり企業のDX化推進を担いたい!という心意気のある方
・営業や製造フローのデジタル化・自動化に携わった経験のある方
■副業者の経歴
Webアプリケーションのシステム開発の経験があり、現在は大手企業で社内業務のDXを推進するプロジェクトのチームリーダーを務めている。クラウドサービス設計だけでなく自身でプログラミングをすることもでき、またプロジェクトマネジメントの経験もある点が、プロジェクトの中で存分に活かされた。
■コーディネーターの役割
ミーティングのファシリテートは副業者が行ったため、議事録取りのサポートを実施。お互いが配慮・遠慮をして期限が曖昧なタスクについては、誰がいつまでにということや、マイルストーンとなる事柄の日程を決め、双方のやる気に依存しない、スピード感が担保されるようなフォローを行った。
また、「スピード感」については、やや企業側が気後れしているところがあったので、企業・人材ともに個別に状況や所感をヒアリングし、必要な場面ですり合わせを行った。
■結果
・見積書作成におけるkintoneの導入
・社内で小さくトライし改善点をフィードバック、改良のPDCAを回し、社内での顧客管理や見積書の上司承認、顧客へ提示する見積書のアウトプットまで一気通貫でkintone内で行えるようになった
・これに付随して、膨大な営業関連データの精査の方向性が見えた
※「令和4年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代プロジェクト共創人材確保事業)」によりプロジェクト支援を実施
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