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会社の“外側”にいる人の視点によって、商品・会社の魅力の“核”が鮮明に | ふるさと兼業

会社の“外側”にいる人の視点によって、商品・会社の魅力の“核”が鮮明に

会社の“外側”にいる人の視点によって、商品・会社の魅力の“核”が鮮明に

金沢の菓子メーカー「北陸製菓」は、1918(大正7)年設立以来100年以上にわたってさまざまなお菓子をつくり続けてきました。2019年には、あるきっかけから同社が手がける揚げあられ「ビーバー」が一躍有名になりました。一方で、北陸製菓の他の商品や企業そのものの周知については課題が。そこで、同社のもうひとつの主力商品である「米蜜ビスケット」の広報戦略を検討するプロジェクトを立ち上げることに。兼業人材とともに新たな挑戦に一歩踏み出す「足がかり」に全力で取り組んだ約3ヵ月間を振り返ります。

 

  受入れ企業概要
■企業名:北陸製菓株式会社
■業種:食品
■事業の種類:toC/toB
■企業規模:100
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
 ・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★★★☆
 ・事業開発に関して…★★★
 ・組織開発に関して…★★★
■外部人材の受け入れ経験:無し
■受入れフェーズ:自社内にスキルを持つ人材がいない
■企業の抱えている課題:主力製品であるビスケットの知名度向上
            効果的な広報戦略を立てるノウハウやスキルを持った人材が社内にいない

■外部人材の受け入れ期間:2022年11月~2023年1月
■受け入れ人数:1
■企業HP:https://hokka.jp/

 

 

商品の良さ、お菓子づくりの思いを届けたい! でも、どうやって?

「ビーバー」が全国に知られるきっかけをつくったのは、石川県のお隣の富山県出身のアメリカプロバスケットボール選手・八村塁選手。チームメイトにビーバーを紹介したのを機に、またたく間に世間の注目を集めることになりました。

 

人気商品の認知度の高まりを受け、北陸製菓もビーバーを紹介するSNSの運用をスタートするなど、情報発信に取り組んできました。一方で、企画開発部副部長の佐竹美紗子さんは「ビーバー以外の商品や企業の周知」に課題感を持っていたと言います。

 

佐竹「当社ではビスケットやクッキーなども製造していて、売上全体でもとても大きな割合を占めています。私たち社員としても、北陸製菓は『ビスケット・クッキーのメーカーである』と認識しているんです。でも、ビスケットやクッキーの商品の情報発信には十分に取り組めていませんでした」

 

広報に関する取り組みは企画開発部で担っていたため、広報関連の専門的なノウハウを持つ人も身近にはいません。「ビーバーのように、他の商品も多くの人に知ってもらいたい」という思いはあるものの、どう一歩を踏み出したら良いかわからない。そんな足踏み状態の中で縁あって知ったのが「兼業人材の活用」でした。

 

佐竹「地元での採用となると選択肢の幅も狭くなります。暮らしている地域や勤務形態に縛られない形で、経験豊富な方に参画いただけるのは大きなメリットだと感じましたね」

 

プロジェクト立ち上げにあたり、広報で発信する商品は「米蜜ビスケット」に決まりました。米蜜ビスケットは金沢伝統の「じろあめ」や玄米甘酒、塩糀といった発酵食品、てんさい糖などによる穏やかで素朴な甘みと発酵食品が生み出すコクが楽しめるビスケット。卵と乳、食品添加物は使っていないためアレルギーのある子どもでも安心して口にできます。佐竹さんいわく「北陸製菓が大事にしている、『安心・安全でやさしいお菓子づくり』という想いが込められている」のだそう。米蜜ビスケットそのものの魅力はもちろん、企業の想いを消費者に届けていくため、仲間を募りました。

 

「誰に」「何を」「どう」伝えるかを整理する中で気づいた思い込み

いくつかの応募の中から、広報活動やSNS運用などを含めマルチに活躍する人材と出会うことができ、2022年11月から本格始動。プロジェクトが始まってすぐに、佐竹さんと、同じくプロジェクトに参画した企画開発部の小林里美さんは、兼業人材参画のメリットを強く実感することになりました。

 

佐竹「最初に驚いたのが、顔合わせと企業・商品理解の場を兼ねて金沢の本社で行ったキックオフでのやりとりです。私たちは当初、『金沢から』ということにこだわっていたんです。でも、実店舗を見たり商品を手にとったりした兼業人材の方からは『あえて金沢らしさにこだわる必要はないのでは?』との指摘があって、ハッとしました。私たち、知らないうちに『金沢の企業なのだからそれを打ち出さないといけない』と思い込んでいたんです。第三者の素直な指摘のインパクトの大きさを実感しましたね」

 

キックオフ後は、オンラインコミュニケーションツールでの情報交換に加えて、週1回のオンラインミーティングで売上実績の共有や広報戦略に関するアイデア出しなどを行いました。特に重きを置いたターゲット選定に際しては、原材料、製法のこだわり、パッケージデザインなど、米蜜ビスケットのさまざまな特徴、強みを徹底的に洗い出すことに。洗い出しで見えてきた特徴を丁寧に整理した上で、より強く情報を発信したい対象を「健康意識の高い子育て中のママ」と、働き世代の「オシャレ女子」に定めました。

 

佐竹「オンライン販売での売上が好調なのも、米蜜ビスケットの特徴でした。2つのターゲット層にはSNSでの発信が効果的との助言もいただき、SNSでの発信に重点的に取り組み、オンラインでの商品購入につなげていこうという方針になりました」

 

また、ターゲット選定を進める中で、佐竹さん・小林さんの中で「北陸製菓が大事にしてきた『やさしさ』がどういったシーンを想定して使われているか」がより鮮明に見えてくるようにもなったといいます。

 

佐竹「体にやさしい素材でできていることを指すだけでなく、商品を味わうことで『温かい時間を過ごしてもらいたい』という意味も込めて、私たちは『やさしさ』を使っていたのだなと気づきました。今までぼんやりとしか見えていなかったことも、プロジェクトを通じてきちんとピントを合わせられるようになった感覚がありますね。広報では、当社が大事にするいろんな『やさしさ』を伝えていきたいと思うようになりました」

 

 

兼業人材はともに課題解決に取り組む同志。互いに目線を合わせ、チーム全体で成長する

約3ヵ月間のプロジェクトを振り返り、「兼業人材の方から『意見や質問は遠慮せず何でも言ってください』と言っていただけたので安心していろいろ言うことができました」と話す佐竹さん。助言もあり、プロジェクト期間中はメンバーそれぞれ、立場を気にしすぎず意見を言い合うことを意識してきたそうです。

 

佐竹「今回のプロジェクトは、これからの広報活動を継続して実行していくための足がかり。兼業人材の方には、その立ち上げメンバーとして関わり合っていきたいと思ったんです。『こんなこと聞いていいのだろうか』と思ったり、専門知識を持っているからと全部任せきりにしたりしていては、すぐに立ち行かなくなってしまいます。今後を担う私たちも立ち上げメンバーであると意識して、一緒に作り上げていくことを意識してきました」

 

SNSの運用は小林さんが担当するとのこと。小林さん自身、プロジェクトが始まった段階から「今後に向けて」臆せずいろいろと質問したり相談したりすることを心がけていたそうです。

 

小林「実は私SNS初心者で、最初は本当にわからないことだらけでした。でもこれから自分がメインで運用していくと思ったら、疑問や不安はできるだけ準備中に晴らしておかないと。プロジェクトを通して専門知識のある方から学べたことは、本当にありがたい経験でした」

 

兼業人材活用の最大のメリットを「スキルの高い優秀な人と一緒に課題を解決していけること」「解決に全力で取り組んでくれる人材とともに試行錯誤できること」と口をそろえる佐竹さんと小林さん。今後も、何か課題に直面した際は兼業人材の力を借りたいと目を輝かす姿に、3ヵ月間を通して多くの学び、経験を得てきたことが伝わってきました。各SNSのアカウントの準備も整い、プロジェクト終了後いよいよ本格的に運用が始まります。これからどのように広報活動が展開されていくか、期待がふくらみます。

 

  プロジェクト結果概要
■人材の条件
・関わり方:兼業
・頻度:週1回程度のMTG(オンライン)/チャットツールでの進捗共有
■必須条件や歓迎条件
【こんな人に来てほしい】
・チームの一員として、社員とともに協働してくれる方
・率直な意見や感想を伝えてくれる方
・客観的な視点から積極的に発言してくれる方
【必須スキル】
・マーケティングやブランディングの経験がある方
・販売促進・広報戦略に知見がある方

■兼業者の経歴
大学卒業後、総合広告代理店でTVCM制作を含めたオンライン・オフラインの統合プロモーションを担当する。
2016年にはよりデジタルに特化した広告代理店にて、デジタルメディアの戦略プランナーとしてマーケティングに携わる。
2017年より外資系SNS運営企業に転職し、アジア全域における広告営業部門やコンテンツ部門を歴任。
2022年からは別の外資系SNS運営企業のスターティングメンバーとして営業部門で複数業種を担当。
本業で得たWeb・SNSマーケティングの知見を活かし、複数の企業で外部人材として兼業を行っている。
■コーディネーターの役割
企業課題のヒアリング及びプロジェクトの設計、現地ミーティングのファシリテートを担当。兼業人材の企業理解度や現状分析が高く、提案も非常に的確。受入企業の担当者も学習意欲やプロジェクト推進に懸ける想いが強く、外部人材の受入れに積極的であったため、すぐに関係が構築されていた。
現在、プロジェクトは基本的に企業担当者と兼業者の二者でほぼ自走状態で進んでおり、おおむね当初想定していたスケジュール通りに進行している。

※「令和4年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代プロジェクト共創人材確保事業)」によりプロジェクト支援を実施

 
※本記事はNPO法人G-netが中部経済産業局「令和4年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代プロジェクト共創人材確保事業)」の委託を受けて作成しています。