事業を推し進める枠組みが広がった、兼業人材とのリブランディングプロジェクト
2021年01月06日(水)
兼業人材とともに、自社が抱える課題を解決し、ネクストステップへ。この記事では株式会社鷲見製材の事例をご紹介します。創業93年の歴史。20年前から手がけてきた特徴的な住まいづくりの仕事。課題としていたのは、時代や業界が変化するなかで、自分たちのブランドメッセージをどう届けていくか。2019年11月から約7ヶ月、3人の兼業人材とともに、自社ブランド「ひだまりほーむ」のリブランディングに挑みました。
■企業名:株式会社 鷲見製材
■業種:建設業
■事業の種類:toC
■企業規模:37人(役員含む)、16人(パート)
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★☆☆☆
・事業開発に関して…★★★★★★★☆☆☆
・組織開発に関して…★★★★★★★★☆☆
■外部人材の受け入れ経験:無し
■兼業PJの業務内容
ブランディング再構築の全体像をつかみ、まずは社内に宣言できるようにすること
■受入れフェーズ:自社内にスキルを持つ人材がいない
■企業の抱えている課題
広報/ブランディング×知識/ノウハウ不足
■企業HP:https://hidamari-home.jp/brand/
創業時は、岐阜県郡上を拠点に製材業に携わってきました。創業から70年以上、地元の山や森と密接な仕事をしてきたのです。転機がやってきたのは20年ほど前。輸入材の台頭によって国産の木材の需要が激減しました。国産の木が使われなけれど、郡上の森も廃れていってしまう。「森を守りたい」という想いから、国産財を使った、地域の職人による住まいづくりをスタートさせました。地産地消の事業への志は岐阜県内で広く認められるものに。岐阜市に拠点を移し、大垣市、各務原市にも展示場を設けるなど、右肩上がりに成長を重ねていきました。
そんな想いとこだわりを込めた事業を展開してきた鷲見製材、実はブランディングや情報発信をすべて我流でおこなってきました。そこに課題感もあったと語るのは石橋明世常務。
石橋常務「営業、工事、設計など住まいづくりの専門性については、外部の勉強会に参加するなどしてきました。ただ、どんなことを伝えたいかは自分たちでも考えられるところ。正直、お金をかけるという発想がなかったんです。ただ、最近では国産材にこだわるハウスメーカーさんも増えてきて、もっと明確に自社ブランドのコンセプトやメッセージを発信できないと埋もれていってしまう。リブランディングの必要性は、この数年ずっと感じてきました。それでも、ブランディング会社に丸投げもちょっと…と思っているうちに時間はどんどん過ぎていて。社内に十分な余力もなくて取りかかれずにいたんです。『兼業人材と一緒に取り組んでは?』と提案してもらったのはそんな時でした」。
自社の課題に兼業やプロボノで取り組んでくれる人がいる。未経験の領域に「そんなことができるのだろうか」と疑念もあったそうです。それでも、多様な価値観や新しい手法を受けいれていこうという社長の方針もあり、兼業人材の受け入れを決めます。
2019年11月、印刷業、広告業、不動産業に携わる3人のメンバーとのリブランディングプロジェクトがスタートしました。
はじめての兼業でのプロジェクト。リブランディングのゴールを、ロゴマークの変更とブランドメッセージの作成としました。隔週1回くらいのペースで進められていきます。石橋さんが大切にしたのは、自社への理解を深めてもらう最初の1ヶ月でした。
石橋常務「ひだまりほーむの住まいを見てもらい、当社のオフィスにも来てもらいました。森を守りたいという気持ちをしっかり伝えたくて郡上にも。私たちを知ってもらいながら、お酒をご一緒したりもして、距離を縮めていきました」。
▲ ひだまりほーむの住まいを直に見て、思いやこだわりを聞く機会をつくりました
会議はオンラインツールを使う場合もあれば、岐阜市や名古屋市で直接会っておこなう場合も。当初はオンラインツールの扱いに不慣れでしたが、NPO法人G-netのコーディネーターである木村さんのサポートで、兼業人材とのコミュニケーションがスムーズにできたといいます。
リブランディングに向けてまず取り組んだのは、ひだまりほーむのイメージを客観的に再確認すること。お客様、職人さんなど、鷲見製材とつながりのある人たちへのアンケートやヒアリングを実施しました。お客様へのアンケートを担当したのは兼業人材の3人。集まってきた声をもとに、打ち出すべきポイントを見定め、ロゴやキャッチコピーの方向性を検討しました。石橋さんは、社内外の人間が一緒にあれこれ意見を言い合うのが刺激的だったと語ります。
石橋常務「兼業やプロボノで入ってくれる人たちとは、上司部下の関係でもなくフラットな立場で意見交換できるんですよね。みなさんそれぞれに能力のある人なので、どんどんアイデアも出てくる。すごく面白かったです。フラットな分、誰が話をおさめたらいいのか最初は迷いましたが、木村さんがファシリテーターとして伴走し、議論を取りまとめてもらえたので、徐々に慣れていくことができました。右も左も分からずに兼業プロジェクトを進めるなかで、いつも頼れる存在でした」。
▲ オンライン会議の様子。社内にオンラインツールが浸透する機会にもなったといいます
そして、アンケートからキーワードが見えてきた頃、転職で入社したブランディング業界経験者がチームに加わりました。言葉やデザインを固めていく上で最高の戦力となり、メンバーの意見も反映しながら、ロゴとブランディングメッセージが完成。2021年9月、無事にお披露目を迎え、その場に兼業メンバーの姿も。
リブランディングに向けて、ひだまりほーむへの印象を掴むためにたくさんの声を集めて整理し、自社の発信力を高めるための表現に変える。兼業人材の3人は、マンパワーも要するプロセスを着々と実行していく心強い力として、多様なイメージから訴求ポイントを見極める社外の多角的な目として、プロジェクト完遂に欠かせない大きな存在となりました。
▲ ブランドメッセージとなる「本物は美しい。」を関係者へ発表するお披露目会の様子
▲ 新聞記事でも、兼業人材の活用について取り上げられました
実は鷲見製材では、リブランディングプロジェクト以降も、兼業に限らず積極的に外部人材を受け入れています。
石橋常務「初めて兼業の人たちを受け入れてみて、事業の進め方の幅が大きく広がったと思っています。正直、受け入れる前は『やってもらえるのかな』と手探りなところもあったんです。けれど次第に、全部をお任せするのではなく、それぞれの専門性を発揮してもらいながら、私たちも二人三脚でゴールへ向かう覚悟を決めないといけないのだと分かりました。社内の仲間とは異なる力をお借りできたおかげで、今まで手つかずにしていた課題をぐいぐい進められたと思っています。事業の進め方や会議でのコンセンサスの取り方など、他の業界の仕事の仕方から学ぶことも多かったですね。
一方で、みんなデザインやコピーのプロではなかったので、ロゴや文章をカタチにする段階では迷いもしたんです。ブランディング経験者が仲間に入ってくれたのは素敵なご縁でしたね。集まったメンバーでどこまでできるのか、プロジェクトのゴールの設計も大切だなと感じています。
いずれにしても、社内だけでできないタスクに、兼業人材の人たちと挑戦できるという気づきは大きなものでした。たった1年で社内に外部人材の方がいても当たり前の雰囲気になっていますよ」。
ただ人手が足りないから手伝ってもらうという話では決してない。各々の専門性が生きる受け入れ体制、プロジェクトの設計ができれば、社内だけではなし得ない成果を産むことができる。鷲見製材は、兼業人材の活用を経験したことで、新しい事業にアグレッシブにチャレンジしていく方法論を得たのかもしれません。
石橋常務「みなさんいつの間にか『うちはこうですよね』って、ひだまりほーむのことを『うち』って自然と言ってくれるようになっていました。なんだかすごく嬉しくて。みなさん熱を持って参画してもらえたので、私たちも本気でお応えできました」。
ファンとして、自分事として、ともに知恵を絞り、汗を流してくれる仲間が増える。リブランディングプロジェクト後も継続して兼業で関わっている人もいます。そんなつながりも、兼業プロジェクトから生まれる財産です。
▲ 新しいロゴやブランディングメッセージを使いリニューアルされたWebサイト
WEBサイトURL:https://hidamari-home.jp/brand/
■人材の条件
・関わり方:兼業、プロボノ、スキマ時間、週1日~OK、時短・裁量制、リモート可
・頻度:週1日(8時間)程度
①フィールドワーク:期間内に2~3回実施したい
②定期打ち合わせ :オンラインで実施想定(1~2週間に1回程度)
・一部現地あり(4回程度)
■必須条件や歓迎条件:
・想い《人・こころ・地球にやさしい住まいづくり、暮らしづくり》に共感する方
・人が好きな方
・ブランド戦略の知見・立案の経験がある方
■兼業者の経歴
A)システムエンジニア。社内でプロジェクトマネジャーの勉強中。
B)広告代理店でマンション広告の営業として2年、マーケティング担当として1年勤務。仕入用地からのターゲット策定、コンセプト立案、広告戦略立案は20件以上の経験と販促ツール作成・印刷についての基礎知識があり。
C)住宅関係の広告会社勤務。
■結果
・定性目標に対しての結果
ブランドメッセージとなる「究極の一言」が完成。ひだまりほーむブランドを再定義し、社内外へ浸透することにおいて、この究極の一言からロゴマークの新デザインやホームページの改修が実現した。
またこれらのアウトプットに向けて実施したアンケートを含む、社員とのコミュニケーションの中で、ずれが生じている部分、ずれていない部分が確認されるという効果もあった。
・定量目標に対しての結果
定量的な目標はなかったが、アンケート調査では、匠の会(施工職人)14件、社員アンケートを2度にわたりのべ32件、オーナー様50件の回収。
■コーディネーターの役割
ミーテイング時のファシリテート。人材からの、企業の想いや経営者への共感が強く、関係性構築に時間はかからなかった。一方、それぞれが強い想い・主張を持っているため、どこで折り合いをつけるか、最終的にはいつどのタイミングで、誰が決定するか、という調整を行った。
※「平成31年度中部地域における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代コア人材)」によりプロジェクト支援を実施
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