「山の中だからこそ、新しい風に期待」〜プロジェクト事例・兼業受入企業編 <青荷温泉>
2020年02月07日(金)
「地域×兼業」に魅力と可能性を感じて、プロジェクトを立ち上げた「青荷温泉」。山の中の一軒宿だからこそ、外から吹く新しい風に期待を持って、兼業人材を受け入れました。
単に人材不足を補うのではなく、「兼業者」という正社員以外の人材を受け入れること、また、プロジェクトを立ち上げ目標達成に向けて動くことに、どのような成果があったのでしょうか。企業側にとって兼業の価値とは?
受け入れた感想を、代表取締役社長の原田篤久さんに伺いました。
■~旅×働く~ テレビもなくスマホもつながらない錦秋の秘湯で、非日常に浸る
下界とは約6㎞ほど離れた、青森県八甲田山中にある部屋数30ほどの一軒宿「青荷温泉」。ここには、四季折々の自然を楽しめる4つの湯があります。「ランプの宿」として知られ、全国各地や海外からも、旅行客が訪れます。
ネット環境がほとんどないという異次元の世界で、17人のスタッフが働いています。
■「宿泊客を増加させたい、人手不足をなんとかしたい」と兼業導入
−−−今回、数名の兼業実践者とプロジェクトを進行し、現段階では終盤を迎える場面ですね。そもそも、当初はどのような経緯で、兼業人材を受け入れようと決断されたのでしょうか。
青荷温泉へ来てくださるお客様が平成14、15年頃をピークに減少しつつあること、それから慢性的な人手不足にも悩んでいました。特に人手不足のほうは、場所が人里から6キロも山の上に登ったところにあるので、一筋縄ではいかないんですね。問題解決に向けて何か方法がないかと模索するなかで、「地域おこし協力隊の人に来てもらうのはどうだろう」などといった相談を役所でもしていたんです。そこで勧められたのが「ふるさと兼業」でした。
ふるさと兼業の取り組みは、県外の人とタッグを組むことができるので、より高いレベルの発信力が期待できると思いました。これは、普通に人材不足を補うだけでは実現できないことです。宿の仕事にしても、ただ手伝っていただくだけでなく、外からみた問題点を指摘してもらって、改善することもできます。長い目で見て、少しずつでも問題点をなくしていければと思い、受け入れを決めました。
−−−兼業人材を受け入れるにあたって、不安はありませんでしたか?
ゼロからのスタートでしたので、それはなかったですね。スポットでもいいから、誰か来てくれればありがたいという状況でしたので。繁忙期は特に、超短期でもとても助かるんです。
ですが、一つだけ心配したことをあげれば、若い方がネットも電波も通じない環境に耐えられるのかということですね。これは、泊まりで働いていただくときは毎回心配する点です。今回の実践者の方々は大丈夫だったようですので、ほっとしています。
受け入れ側としては、いきなり雇用するよりも、ふるさと兼業のスタイルの方がハードルが低いので、その点が不安なく始めることができたポイントかと思います。マッチングではないですが、とりあえず来ていただいて。もしもその方が、今後も来たいと思ってくださったら、次に進んでいけますから。こちらにとっても、雇用される側にとっても、ありがたいことだと思います。
■兼業者を巻き込むことが課題解決のきっかけに
−−−今回、生まれた成果はありましたか? 具体的に教えてください。
実践者の皆さんからは、本当にさまざまなアイディアをいただきました。すぐに実現できそうなものから、なかなか踏み入れられないと思っていることまでありましたが、これから一つ一つ、検討していこうと思っています。
例えば、宿の仕事の問題点では、拘束時間の長さや、電力の問題で掃除機がかけられないことによる仕事量の増加、座敷での配膳の労力などがあがりました。私たちが、どれも仕方がないと思ってそのままにしてきたことばかりです。
このような具体例をあげ、ご提案いただくなかで、人手不足を理由にして、課題から目をそらしていることに気が付きました。まずはそれらを直視しようと決意したことが、私のなかでの一番の成果でしょうか。より良い宿にしていくために、「どのようにしたらできるのか」を考える目線に変わっていくことが必要なのだと気がつきました。
仕事が効率化できれば人手不足の解消につながり、接客の質が上がり、最終的には宿泊客の増加にもつながります。改善に向け、取り組んでいきたいと思います。
■新しい風が吹くことこそが、兼業人材の価値
−−−兼業人材を受け入れることに、どのような価値を感じましたか?
お客様も従業員もすぐに来てくれたらもちろんベストなのですが、それは現実的には難しいことです。また、お客様だけすぐに増えたり、従業員だけすぐに増えたりしては大変ですので、バランスもとっていかねばなりません。
その点兼業人材を活用すると、少ない負担で、徐々に効果を上げていくことができることがよかったですね。しかも、都会からも人材が来てくれますので、この山の中に、新しい風を吹かせることができるんですよね。
今回来てくださった実践者の皆さんはとてもテキパキと動いてくれましたから、労力としてもありがたかったです。加えて、世間話のなかで「こうしたほうがいいよ」「こういうやり方もあるよ」と教えてくださって。みんなで夕食を囲んだときなどは、とても楽しそうでした。従業員たちにとっても、良い影響があったと思います。
繁忙期は特に目が回る忙しさで、少しの掛け違いでスタッフ同士ストレスも感じることがあります。そんななか、実践者の皆さんが来てくれたことで、従業員たちに心の余裕が生まれたように感じました。コミュニケーションが優しかったんですよね(笑)。外面を良くしようというのではなく、嬉しかったのだと思います。彼らの日々の業務は、繰り返し作業のため、聞かれたり頼られたりすることがあまりありません。ですので今回、実践者の皆さんが喜んで業務を習得していく様子を嬉しく感じていたのではないでしょうか。
この風を追い風に、少しずついい方向へ向かっていけたらいいなと思っています。
<クレジット>
※本記事はNPO法人G-netが経済産業省「令和元年度地域中小企業人材確保支援等事業(中核人材確保スキーム:横展開事業)」の補助を受けて作成しています。
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