オンラインでホテルのPR業務に挑戦。手付かずだった広報ツールの制作も大きく前進させられた。
2023年02月28日(火)
新型コロナウイルスの影響で、大学生の生活にもさまざまな変化が起きてきました。アルバイトができず収入が減ってしまった人も多くいます。そうした学生に対する支援として、休眠預金を給与して活用し、企業で働ける機会を提供する事業が2021~2021年度にかけて、実施されました。ただ仕事を用意するだけでなく、参加企業それぞれが、課題解決や新規サービス開発などに取り組むプログラムをコーディネーターとともに設計。企業にとっても、学生にとっても新たなチャレンジの機会となった事例がいくつも生まれました。
本事業はNPO法人G-netが、一般財団法人リープ共創基金「キャッシュフォーワーク 2021」の助成を受けて実施をしています。
この記事で取り上げるのは、株式会社協同企画の事例です。(募集記事はこちら。)協同企画は、1979年の創業から40年以上、秋田県湯沢市の「湯沢ロイヤルホテル」を運営してきました。宿泊業だけでなく、レストラン、冠婚葬祭、フィットネス、介護予防、宅配業など、地域から必要とされる事業に広く携わっています。2021年には、自社開発のフードメニュー「FREE FROM」の提供を開始。グルテンフリー、ミートフリー、アニマルフリーといった、近年注目される要素を取り入れたメニューを提案しています。2022年3月からは、ECサイトでの全国販売もスタートしました。今回のプログラムでは、「FREE FROM」を含めた、協同企画の事業の認知度アップが課題となります。参加した学生は2名。そのうちのひとりの名嘉村美言さん(神戸大学4年生)と、協同企画の常務取締役の京野楽弥子さんにお話を聞きました。
―京野さんから、今回の休眠預金活用事業に参画した意図を教えていただけますか。
京野 新型コロナウイルスによって、宿泊、冠婚葬祭、飲食に関わる事業を営む当社も影響を受けました。これからの事業のあり方を模索し、「FREE FROM」のような新しいブランドも生まれています。ただ、大きな課題となっているのが人材不足です。拠点である秋田県湯沢市は少子高齢化が進み、若い世代の多くは高校卒業後にまちを離れてしまいます。事業の発信に力を入れたくても、新しい人材を入れるのが難しい。そんな状況下で、従来とは異なる新しい働き方に興味を持ちました。そんな時に、休眠預金を活用した有給でのインターンシップのお話をいただいて。オンラインでお仕事をお願いしたことはありませんでしたが、挑戦してみようと決めました。
―そうして募集をかけられ、名嘉村さん含めおふたりの学生さんが採用となりました。名嘉村さんの参加動機も教えてください。
名嘉村 このインターンシップについては、SNSの広告で偶然知りました。大学4年生で少し学業も落ち着いて、ちょうど卒業までになにか新しい経験がしたいと考えていたんです。私もオンラインでの長期インターンシップは初めてでしたが、プログラムを探して応募してみました。
協同企画さんを選んだのは、広報やマーケティングに関わる業務だったから。私は経営学部に所属しているので、学んできた知識を活かせるのではと思いました。
―2022年8月中頃から2023年2月まで、約半年のプログラムが進められました。具体的な内容を教えていただけますか?
京野 おふたりには、SNSでの発信や、チラシやイベント用POPの作成をしてもらいました。当初は、「FREEFROM」がメインとなる予定でしたが、ホテル、ウェディング、葬儀、フィットネス、介護など、あらゆる部門から広報を手伝ってほしいとニーズが上がって。「こんなことを発信したい」という依頼に対して、おふたりがSNSのコンテンツや案内用のチラシを考えてくれました。
この他、名嘉村さんはデータの整理や分析も得意なので、おせちの販売などの顧客情報をまとめる業務もお願いしました。ひとつ伝えると、すぐに背景も含めて理解してもらえるので、すごくスムーズなやりとりができてとても助かりました。
―名嘉村さんは、実際に情報発信やデータ整理の業務をしてみて、印象に残ったこと、気づいたことはありますか?
名嘉村 シフト制で週3、4日業務に取り組みました。SNSはできるだけ毎出勤日にアップする。チラシ作成やその他の業務は、京野さんや各部署の担当者の方から依頼をいただいて、順番に取り掛かっていくという流れです。チラシをつくってみて、最初は自分のイメージと、他の方のイメージがずれてしまうこともありました。イベントのお知らせ、新商品の紹介など、内容はさまざまです。そのチラシでなにを伝えたくて、それがはっきり伝わるデザインはどんなものか。試行錯誤して、担当者の方にも相談しながら、形にしていきました。「こういう情報を付け加えてね」「もうちょっとこんなイメージがいい」。アドバイスをもらうたびに自分の足りない部分にも気づけて、仕事を通してたくさんの学びを得られました。
京野 名嘉村さんたちのSNSでの発信も、つくってくれるチラシも社内での評判が良くて。結婚式や歓送迎会の広告、お葬式での典礼のご案内など、部門ごとに伝えたい内容に沿って、的確や色や言葉を提案してくれました。コンテンツが素晴らしいので、これからどのように活かしていくかを考えています。
名嘉村 データ分析については、大学で学んだ知識や技術を活かせはしたものの、もう一歩踏み込んだ分析ができると、より活用しやすいデータにできたかもしれません。ターゲットの想定はビジネスの基本ですが、私はこれまでそのことを強く意識したことがありませんでした。顧客情報をただきれいにまとめるだけでなく、ターゲットがどんな人かを踏まえて戦略的に分析する。そんな視点の大切さも実感できたと思います。
―名嘉村さんたちに広報などに関わっていただいた成果を、京野さんはどのように感じていますか?
京野 当社では、どの現場においてもほとんどの社員がシフトで動いており、広報は誰かが兼務で行ってきました。例えば、ウェディングプランナーの業務のかたわらでSNSの発信をするなど。なかなか手が回らず、発信が後回しになってしまったり、チラシをつくる時間がないので口頭でのご案内だけにとどまっていたり。「あったらいいな」と思っていたツールがいくつも形になったのは、今回のプログラムの大きな成果です。
―協同企画にとっても、名嘉村さんにとっても、オンラインでのインターンシップは初めてとのことでした。こうした業務の回し方はいかがでしたか?
京野 最初は私も他のスタッフも、なにをどう頼めばいいのか手探りでした。けれどプログラムが進むうちに、遠隔でもできることが分かってきました。現地に人がいなくてもご相談できることがあると知れたので、オンラインでのインターンシップなど、多様な人の巻き込み方を検討したいです。すべて社内でなんとかしようとしていた業務も、うまく分担できるようになるのではないでしょうか。
名嘉村 私は大学の講義もずっとオンラインだったので、遠隔でのやり取りへの抵抗はありませんでした。むしろ、オンラインだからこそ、秋田県も選択肢に入れられた。長期インターンシップでも、対面よりも気軽にチャレンジできたように感じます。距離が離れている分、一回のやり取りで必要な報告・連絡・相談は漏れなくしようと意識しました。二度手間になってはお互いに時間がもったいないので、効率的なコミュニケーションがとれるといいですよね。
京野 また当社の場合、シフトの都合もあって、毎週決まった時間にミーティングを行うのは難しく、徐々に個別のやり取りが増えていきました。ただ、直接会えないからこそ、定例でなくても週1回でもお話しする機会が持てたらよかったと思っています。お互いの状況を共有し、大きな認識のずれなどを起こさないためにも、面と向かって話すのは必要ではないでしょうか。
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