兼業人材と力を合わせ「小さな改善の積み重ね」の第一歩に踏み出す
2022年03月16日(水)
発売開始から50年以上のロングセラー「おにぎりせんべい」を主力製品とする「マスヤ」を中核に、菓子製造や酒類製造、介護事業、ホテル、ブライダル、商社、旅行業など多種多様な事業を展開するマスヤグループ。現在グループ企業の持株会社である「マスヤグループ本社」が中心となってグループ全体のDX(デジタルトランスフォーメーション/IT技術による変革)を推進しており、その一助として兼業人材の活用にも乗り出しました。兼業人材との協働がどんな成果につながったのか、プロジェクトの歩みを振り返りながら導き出します。
■企業名:株式会社マスヤグループ本社(三重県伊勢市)
■業種:食品製造業など
■事業の種類:toC
■企業規模:225名(グループ全体)
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★★★★
・事業開発に関して…★★★★★★★★★☆
・組織開発に関して…★★★★★★★★★☆
■外部人材の受け入れ経験:無し
■受入れフェーズ:試行錯誤する内部人材が既にいる
■企業の抱えている課題:IT部門の社員が通常の業務で手一杯になってしまっており、重要だが緊急度が低い生産性向上の取り組みがなかなか進められていなかった。
■外部人材の受け入れ期間:2021年11月〜2022年2月
■受け入れ人数:5名
■企業HP:http://www.masuya.co.jp
「いつかやらなきゃ」と思いながらも先送りしてしまう慣習の見直しに正面から向き合う
大手企業を筆頭に全国で展開が見られるDXの推進について、マスヤグループ本社執行役員グループCIOを務める神山大輔さんは「地方の中小企業だからDXに取り組みやすい面もあり、前向きに取り組むべきもの」と言います。グループ全体の情報システムを横断的に統括する、DX推進の責任者である神山さんは、三重県で人材コンサルティング会社を経営する黄山さんとの出会いをきっかけに、「兼業人材の活用」について知ることになりました。
神山さん「当社では副業が禁止なのもあり、『兼業人材の活用』は目からウロコの発想で、非常に新鮮に感じました」
黄山さんに相談する前から、親しい後輩が「プロボノで活躍している」という話を聞いていた神山さん。兼業人材活用の話を聞きたとき「何かピンと来るものがあった」そうで、兼業人材と取り組むプロジェクトの立ち上げを決めました。
神山さんは、決められたプロジェクト期間内で人材のポテンシャルを最大限生かすにはどうしたら良いかを考えた末、プロジェクトでは「小さな改善の積み重ね」に取り組むことを決めました。
神山さん「取り組めばすぐに改善できそうな小さな改善ほど『後からでも大丈夫』と先送りにしやすい。ですが、塵も積もれば山となります。今すぐにでも取り組めるような小さな改善から目をそらさず、会社としてしっかりと向き合っていく姿勢を示したいと考えました」
兼業人材の年齢も経歴もさまざま。共通するのは「お役に立ちたい」という思い
「1人でも力を貸してくれたらうれしい」と思っていたという神山さん。フタを開ければ13人もの応募があり、最終的に兼業者4人、プロボノ1人の採用に至りました。
プロジェクトメンバーは20〜50代と年齢層も広く、経歴や専門分野は非常にバラエティー豊か。ソフトウェア企業のコンサルタント、ホテルや商業施設等の施設管理業務を行う企業の社長、外資系コンサル企業の現役SE、元コンサルタントで現在はベンチャー企業における経営企画、商社系企業でまさにDXを担当している人まで。「兼業やプロボノ」といった取り組みに対する経験は少ない方ばかりでしたが、小さな改善を積み重ねることを目的としたこのプロジェクトには十分すぎる人材が集まったようです。
神山さん「応募者との面談で驚いたのが、お金を理由に応募した人がひとりもいなかったこと。募集前は、『副収入目的の人も多少はいるのだろうな』と予想していました。ですが皆さん、自分の力を役に立てたい一心といった方ばかりで。志の高さにすごく感動しました」
兼業人材と社員がひとつのチームになり、「小さな改善」に取り組む
メンバーが全員三重県外在住だったのもあり、キックオフミーティングはオンライン形式で実施。11月には懇親会と現地視察を兼ねてマスヤグループ本社にプロジェクトメンバー全員が集まりました。現地視察時に今回使用するツールのレクチャーを受けた後は、定期的なオンラインミーティングで進捗を報告しながら、ペーパーレス化をはじめとした業務改善を進めていきました。
ミーティングには神山さんの4人の部下も参加。「参加は任意だったのですが、気づいたら全員が毎回参加していました。私を介さずにプロジェクトメンバーと社員がやり取りする、なんてことも見られましたね」と神山さんは振り返ります。
ほかにも、物流管理の知識をもとに在庫管理システムを設計するなど、メンバーが個々の専門性を生かして個別に改善の提案をするなど、自発的な動きも見られたといいます。一方で、メンバーが専門的な知見から取り組みに「待った」をかけることも。例えば当初取り組みたいことのひとつとしていた「業務の自動化」は、メンバーから「RPAによる業務自動化はすぐにできるものではない」との進言があり、見送りとなりました
神山さん「プロジェクトメンバーの皆さんはとても優秀で前向きで、いい意味で遠慮がない。時には私に対してビシッと厳しい意見を示すこともありました。部下たちはびっくりしたかもしれませんが(笑)、『ここまで言って良いんだ』みたいな目安を感じ取れる機会ににもなったのでは、と思います」
プロジェクトを通じてペーパーレス化が進み、2022年4月からプロジェクトの成果物となるシステムの導入を本格スタートさせる予定とのこと。また、今回のプロジェクトを通じて副業・兼業人材活用の可能性を強く実感したのを受け、マスヤグループでも副業・兼業の解禁を前向きに検討し始めているそうです。今回のプロジェクトは小さな改善のみならず、会社そのもの姿勢にも大きな影響を与えたといえるでしょう。
■人材の条件
・関わり方:兼業
・頻度:月3回(各1時間)程度のオンラインミーティング
・リモートで実施(ただし初月に現地ミーティングを1度実施)
■必須条件や歓迎条件
(スキル面)
・課題発見/抽出を得意とする方 (表面的な小手先の効率化ではなく、業務の本質をとらえ、「残すべきもの」「残す必要がないもの」を見極められる方)
・弊社使用のクラウドツールを活用した経験・ノウハウをお持ちの方
※Slack, Kintone, Microsoft365, Lanscope, i-Reporter等々
(マインド面)
・異なる背景を持つ方とも、丁寧にコミュニケーションできる方
・伊勢志摩が好きな方/好きになってくれる方
■兼業者の経歴
・中小企業の代表取締役社長
・外資系コンサル企業SE
・ベンダーコンサルタント
・ベンチャー企業の経営企画担当
・中小企業のDX担当
■コーディネーターの役割
企業規模が比較的大きいため、プロジェクトオーナー(最高情報責任者)の裁量の範囲内で取り組み内容を設計した。人材の選考過程では、一次対応をすべて行い、最終の絞り込みに対しても、過去の事例に基づき助言を行なった。初回の現地ミーティングをはじめ、定例オンラインミーティングに全て参加し、些細な疑問や確認事項に対してスピーディーに対応した。先を見据えて、企業側の従業員の方を巻き込めたのは良かった。
■結果
事業成果の面では、①46種類の紙の申請書のうち、40種を Kintone で電子化。うち6種は電子化の必要性無しと判断。②工場における在庫管理、在庫の見える化の実現。③既存のプロジェクト管理に対して、電子化ノウハウの横展開。④タレントマネジメントシステムやSFA(CRM)への起点作り。
組織変革の面では、①私達の経験値獲得、それによる個々のレベルアップ。②既存プロセスの改善のための着火剤(ただ電子化することに意味は無いと認識することができた)③社外人脈(仲間)の構築。④兼業/副業、及び プロボノに対する理解。
※「令和3年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(次世代プロジェクト共創人材確保事業)」によりプロジェクト支援を実施
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