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伝統工芸の枡を手がける会社の新たな挑戦に参画。ずっと応援したいプロジェクトと出会えた。 | ふるさと兼業

伝統工芸の枡を手がける会社の新たな挑戦に参画。ずっと応援したいプロジェクトと出会えた。

伝統工芸の枡を手がける会社の新たな挑戦に参画。ずっと応援したいプロジェクトと出会えた。

新しい働き方が注目される昨今。まず一度挑戦してみたいと考えて「ふるさと兼業」などをチェックする人も少なくないのでは。
はじめの一歩のきっかけは十人十色。腰を据えて関わり続けられるかも、各々の事情によると思います。

ただ、もしも最初から「期間限定のお試し」と思って臨もうとしているなら、ちょっともったいないかも?

今回ご紹介するのは、ひとつの企業に、継続してエントリーし続け、約2年近くも兼業人材として参画している方のお話。
継続的に関って発揮できた力、心持ちの変化に注目してみてください。

■募集プロジェクト

伝統工芸品をアップデート!!空間に対する想いを具現化する、1300年の歴史を活かした「枡の内装材」の【Webサイト・販促ツール制作】プロジェクト

 

■参画企業紹介

岐阜県大垣市は、伝統的に枡づくりが盛んで、現在も5社のメーカーによって全国シェアの8割を占める枡の特産地です。大橋量器も1950年から続く伝統ある枡メーカーのひとつ。

近年、量りや酒器として使う、昔ながらの用途での枡の需要は伸び悩んでいます。地域の伝統工芸品である枡を時代に合う形で残していきたい。大橋量器はそんな思いのから、枡の新しい使い方や斬新なデザインの提案に力を入れ、有名海外ブランドとコラボした枡なども世に送り出してきました。

そして、大橋量器が枡の新たな可能性として提案しているのが、兼業プロジェクトのテーマでもある、内装建材としての活用です。

 

■参画者プロフィール

Sさん/40代/公務員

普段は愛知県内の某市役所で公務員として働くSさん。プライベートでは様々なボランティアに積極的に関わるアクティブな方。大橋量器の兼業プロジェクトには、2018年7月に開始した第一期から2019年の第二期、第三期まで継続してエントリーを続け参画してきた。

 


 

|  事業も社長も面白い。関わってみたい会社を見つけた。

 

「数年前から『兼業』『パラレルキャリア』などの言葉を耳にするようになって関心がありました。職場以外の外の世界を見られるのは面白そう。公務員には他の業界、職種の方とつながる機会もなかなかないので。そんな時、知り合いづてに、兼業人材を募集している企業のお話を聞けるイベントがあると知りました。そこで大橋量器さんと出会ったんです。」

と語るSさん。40代、50代のキャリア形成のプラスになるのではと期待もありました。

 

イベントで出会った大橋量器の印象は…

「もともとポール・スミスとコラボした枡メーカーは知っていて、『あ〜!あの企業か!』とすぐに心惹かれました。次は枡を内装材として売っていこうとしている。斬新なアイデアで伝統産業の枠を広げる社風に魅力を感じました。社長もとても面白い方で。大橋量器のプロジェクトへの応募を決めました」

どんな人とプロジェクトを動かすのか、人柄が分かると安心できますよね。初めて兼業をするSさんにとって、大橋量器の社長と直に話せる機会が決めてのひとつになったようです。

 

|  新規事業のゼロからのスタートを後押し。

 

こうして2018年7月から活動が始まります。

約4ヶ月で、目標は「まだ動き出していない内装材事業の実績を生み出すこと」。

Sさんを含む兼業人材4名、大橋量器の大橋社長、プロジェクト担当者さんの6名のチームでした。具体的な活動は、内装材を売り込むターゲットのリストアップと営業資料の作成。Sさんは、知り合いの建築デザイナーに相談して、内装材事業や作成中の営業資料に意見をもらいました。

「大橋量器さんも建築業界は未開の地。建築デザイナーさんからは厳しくも参考になるアドバイスをたくさんもらいました。自分の人脈を生かせてよかったです」と語ります。

ゼロベースの状態だった内装材事業がスタートし、提案していくための土台ができたのです。

 

|  長く関わり続けるからこそ果たせる役割がある。

 

続けて、2019年1月から第二期が始まりました。Sさんは、引き続き参画を決めます。

「第一期は、実績づくりという目的を達成して、次は製品を形にしていこうという話で一区切りになりました。4ヶ月間、どんどん話が進んでいくのがすごく刺激的で。中小企業のスピード感を体験すると、この濃密な時間をもっとご一緒したい気持ちが高まっていたんです。」

 

第二期の主題は、建築資材として販売できるモジュールの開発。

兼業チームのメンバーはSさん以外入れ替わり、建築の専門知識を持つ人も加わりました。モジュールの形式やデザインを考えて製品化するプロセスで、兼業チームも意見を出していきました。約3ヶ月でモジュールの素案完成までたどり着きます。

さらに2019年9月からは第三期がスタートし、再度参画を希望。

製品のブランディングと、Webサイトなどの販促ツールの制作を行います。兼業チームは、デザインやブランディングを本業とする2名が加わり、Sさん含めて3名に。広報に長けたメンバーと活動して、デザインや言葉の使い方などを学べたといいます。一方で、第一期から参画してきた Sさんだからできることもありました。

 

「最初から関わってきたので、内装材にかける大橋量器さんの思いを何度も聞いてきました。

経緯が分かっているから、関わる人の思いを踏まえた意見が出せる。新メンバーに伝えていける。長く関わってきたから果たせる役割だと思います。」

すでに動いている事業に関わる上で、思いや認識を共有するのは重要なことです。人の入れ替わりもある兼業チームが足並みを揃えるために、タスクに対する専門スキルはなくとも、Sさんのような人材が果たせる役割があります。

 

|  不安要素は自分を高めるチャンスに変わった。

 

兼業を始める前、不安もあったといいます。

「兼業は初めてで、定時で働く自分がうまく対応できるか気がかりでした。

ミーティングは基本的にオンラインで、それもほとんど経験のないこと。どうコミュニケーションを取るのか少し心配でした」と振り返るSさん。

 

こうした心配事は、活動が進むうちに徐々に解消されていきました。

「ミーティングに出ればいいだけでなく、次回までの課題ができます。

だから、日常的に時間をどう使うかを前より意識するようになりました。隙間の時間に調べ物をしたり、思いついたアイデアをいつもメモできるようにしたり。

オンラインのやり取りも、画面越しに順番に発言するので、はじめはタイミングを逃す時もありました。でも慣れてくると、遠慮せずにはっきり伝えられるようになったと思います」。

Sさんの場合、不安要素はむしろ成長のきっかけになったようです。新しい環境に適応する工夫で、考え方や目線が変わるのも兼業から得られるプラスのひとつだといえるでしょう。

 

|  大事にできる人や会社が増えた。

 

最後に「兼業をすることの価値は?」という質問にSさんはこう答えてくれました。

「大橋量器さんを大切に思う気持ちが強くなりました。『面白いことをやっている』と傍から見ているだけでなく、事業の裏側の社長や社員さんの考えに共感して、なにかできないかと応援したくなる。チャンスがあれば、知り合いに『こんな枡を作っている会社があってね』と話したくなりますよ。そうして愛着を持てる会社や仲間ができたのは、兼業してよかったと感じることですね」。

 

正社員として所属していなくても、その会社の事業を自分事として捉えられるようになっていく。

「好きで大切にできる物、会社、人」が増えていくのはメンタル面でも健康的なこと。

経験値の獲得やスキルアップと同じくらい、貴重なことかもしれません。

 


 

・・・ライター後記・・・

兼業人材と企業、それぞれにプロジェクトに関わる目的意識は異なるでしょう。とはいえ、お互いに自分本位なスタンスでは、いい成果は生まれがたいと思います。ゴールに向けて責任と役割を分担してこそ結果がついてくるもの。その上で、企業を理解して事業を自分事とする姿勢は、プロジェクトの成功はもちろん、兼業人材の成長にもつながると感じました。

 

<クレジット>

※本記事はNPO法人G-netが経済産業省「令和元年度地域中小企業人材確保支援等事業(中核人材確保スキーム:横展開事業)」の補助を受けて作成しています。