経験者と企業の熱意をかけ合わせ、アップサイクル商品の輸出の基礎を作る
2024年03月06日(水)
「すてずに、すてきにRe:craft」を合言葉に、生地や端材、不要になった材料などへ、新たな魅力を吹き込むものづくりを展開する「リクラ」。2021年に誕生したマッチのように擦って着火できるアロマキャンドル「Rotch(ロッチ)」は、廃棄ろうそくを原料とするアップサイクル商品です。株式会社リクラでは、「Rotch」を海外に届けるため、輸出フローの整備に対する専門知識を持つ兼業人材を募ることにしました。兼業人材との協働がどのような成果に繋がったのかを聞きました。
■企業名:株式会社リクラ
■業種:製造業
■事業の種類:toC
■企業規模:10名以下
■他社へのおすすめ度合い(10点中★点)
・外部人材活用全体に対して…★★★★★★★★★★
・事業開発に関して…★★★★★★★★☆☆
・組織開発に関して…★★★★★★☆☆☆☆
■外部人材の受け入れ経験:過去に複数回の受け入れがある
■受入れフェーズ:自社内にスキルを持つ人材がいない
■企業の抱えている課題:輸出のノウハウがない
■外部人材の受け入れ期間:2023年11月~2024年1月
■受け入れ人数:1名
■企業HP:https://recra.jp/
「Rotch」を世界に届けるため、専門スキルを持つ人とともにプロジェクトを進める
リクラの親会社は、60年以上の歴史を持つ石川県金沢市の葬祭用品メーカー「三和物産」です。長年培われてきた葬祭用品の製造、販売のノウハウを活用し、時代に即したビジネスを展開するため、社内ベンチャーとして立ち上がったことが、リクラのはじまりです。
代表の西河誠人さんが設立時に夢見たことは「日本の伝統を世界に発信する」、「捨てられるものを素敵に生まれ変わらせること」。これらを叶えるために、不要になった着物を使ったハンドメイド素材「Kimono yarn(キモノヤーン)」や「Rotch」といったアップサイクル商品を生み出してきました。
西河さんによると、「Rotch」が生まれたのは偶然の重なりだったそうです。きっかけは、事業で関わる美大生がSNSに投稿したキャンドルの先端がマッチになっており、単体で着火できるアロマキャンドルシリーズのデザインというSNSでも話題になったアイデアでした。
西河さんは彼のアイデアを聞き、率直にすごく良いなと思ったそうです。ろうそくは冠婚葬祭に馴染み深いもので、使い切れず大量に廃棄されている現状も知っていました。そのため、彼に「せっかくなら魅力あるアイデアを生かして、一緒に捨てられるものを素敵に生まれ変わらせよう!」と持ちかけたそうです。
試行錯誤を重ね、苦心の末に生まれた「Rotch」は、2022年秋にギフト商品や生活雑貨の国際見本市「ギフトショー」のISICO(石川県産業創出支援機構)ブースで紹介できることになり、大きな転機を迎えます。
ギフトショーでは国内はもとより、海外のバイヤーからも高い評価を受け、魅力的なコンセプトで心を打つ商品に贈られる「ベストコンセプト賞」を受賞しました。さらには、「グッドデザイン賞」も受賞し、誕生から1年あまりで、「Rotch」は国内外問わず、広く注目される商品になりました。
ギフトショー後、まずは国内の販路を整えるために セレクトショップや雑貨店とつながりを築くなど、国内展開を軌道に乗せました。その後、海外輸出を考え始めましたが、輸出に関する基礎知識がなく、西河さんは「どこから手を付けて良いかわからない状態だった」と振り返ります。その中、コーディネーターから兼業人材の活用事例を紹介されたのを機に「新しい働き方会議2023」に参加。輸出の流れの明確化、輸出国の選定、マニュアル作成など、海外輸出の基礎づくりに力を貸してくれる兼業人材を募ることにしました。
何事もはじめが肝心。相互理解を深めて、コミュニケーションを円滑に
同社にとって、兼業人材を募集するのは今回が初めてでしたが、西河さんは大きな期待を寄せていました。
西河さん「専門のノウハウを持つ兼業人材の方にプロジェクト単位で加わっていただくことは、少人数体制の当社にはもってこいの仕組みだと感じました。スキルマッチの観点で最終的な判断をさせていただきましたが、応募してくださった皆さんがそれぞれ『Rotch』に好感を持ち、当社の取り組みにも共感してくださっていたことも、とてもうれしかったです。」
輸出プロジェクトは西河さんと、三和物産の社員でリクラの業務サポートにも関わる大村さん、そして海外輸出業務の経験のある兼業人材の3人がメンバーとなり、11月6日のキックオフから本格的に始動しました。まず取り組んだことは、メンバー同士の相互理解の時間を設けることでした。「何事もファーストステップが大事だ」と西河さんは語ります。経歴や実績などはもちろん、趣味や好きなものなどプライベートな話題も含めて、互いを知ることにじっくり向き合いました。
定期ミーティングは週1回、1時間で実施する、細かな確認や相談はLINEを使ってやりとりするなど、コーディネーターの助言を参考に、プロジェクトを進めるにあたってのルールも整理。日本貿易振興機構(JETRO)への問い合わせやマニュアルの作成など、兼業人材のアドバイスを受けながら具体的な行動に移りました。
西河さん「最初こそ兼業人材の方によるリードがありましたが、徐々に『一緒に進める』感覚に変わっていきました。最初に相互理解を深めたおかげで『何のためにやるのか』を共有し、お互いが自分のやるべきことを全うしやすくなったと思います。」
例えば、兼業人材が改善案を提案したとしても、西河さんたちがそこまで求めていないと思えば率直に伝えることもあったそうです。ファーストステップのおかげで、みんなで同じフィールドに立ち、目標に向かって進んでいく体制が自然と築かれたようです。
そして、プロジェクトがスタートしてしばらく経った10月頃、「ギフトショー春2024」内で開催される「中小企業総合展 in Gift Show」への出展も決定。バイヤーに向けて、海外輸出に踏み出すことを周知させる足がかりも掴みました。
知識や技術、経験も大事。でも一番欠かせないのは、互いに歩幅を合わせる姿勢
約5カ月間にわたるプロジェクトによって、当初目標に掲げていた輸出の流れの明確化、輸出国の選定、マニュアル作成も順調に形になりつつあります。輸出国はフランスやイギリス、スイスなど、ヨーロッパ圏の国を候補とし、ギフトショーでの反応も踏まえていよいよ輸出に臨む意気込みです。
国によって制約条件なども変わるため、輸出先が決まってからもやるべきことはたくさんあります。しかし、1年前と比べたら「自分たちでできることが増えた」と西河さんは胸を張ります。兼業人材を活用した感想を聞くと、大村さんから「私たちの思いをちゃんと受け止めてくださる方だったので、うまくいったのではないかと感じます」との答えがありました。
大村さん「兼業人材の方が自分事として捉えてくれていたことが、うれしかったです。もちろん、求めるスキルや企業との相性もあると思いますが、やはり人柄は大切だと感じました。」
「Rotch」の店頭の陳列写真や紹介記事を見たとうれしそうに連絡してくるなど、兼業人材の自発的な行動に、西河さんも仕事以上の関わりをしていると胸が熱くなったとのこと。
西河さん「求めるスキルを持ち合わせているのに加えて、プロジェクトを『自分事として捉える』姿勢を大切にされている方とご一緒できて良かったです。プロジェクトの推進力に欠かせないものだったと感じます。」
引っ張ってもらうだけでも、頼り切りになるわけでもなく、対等な立場に立ち、同じ目標に向かって進んでいくことは、当たり前のことかもしれないですが、実際に行うことは難しいようにも感じます。世界に羽ばたくためのファーストステップを得た「Rotch」が、どんな国、どんな場所で光を灯していくのか、楽しみな気持ちでいっぱいです。
■人材の条件
・関わり方:兼業
・頻度:月4時間/週1回程度のMTG(オンライン)
■必須条件や歓迎条件
<必須>
・ゼロから商品の輸出(ヨーロッパ圏内)を担当された経験のある方
・Rotchという商品を面白いと感じて下さる方
・フラットな立場で共に考えて下さる方
<歓迎>
・英語ができる方
・海外にコネクションのある方
■兼業者の経歴
大手日用品・化粧品メーカーに勤め、海外ビジネスに従事。
現在はグローバル事業推進部においてFTA(自由貿易協定)推進担当。
過去にはアジア事業統括として、カンボジア・USA・韓国・フィリピン・インドでの代理店契約やビジネス立上げを経験。
■コーディネーターの役割
目的やマイルストーンにズレがないか定点観測する役割。
関係性もすぐできお互いが意見を言い合い、良好にディスカッションができていたので、あえて深く入らず1か月ごとの振り返りにて、毎回ゴールとマイルストーンの確認を進めた。
■結果
①輸出の準備
商品の輸出規制の確認/商品の金額設定/意匠の確認/輸送手段の確認と見積もり/説明書の英訳を実施。
②ギフトショーへの出展準備
資料/Q&A/御礼メールの英訳、商談の流れなどの確認を実施することができた。
※「令和5年度中部経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(副業・兼業等外部人材確保事業)」によりプロジェクト支援を実施
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