【前編】越境研修の「成果」と「1年後」から、人材育成にとどまらない越境の可能性を考える
近年、企業人材の「越境」による学びへの注目が高まっています。企業が「越境」による学びの成果に期待し、社員に研修として「越境」を経験させることも広がってきています。
ふるさと兼業を運営するNPO法人G-netでは、大手企業などの社員が地域の現場へと「越境」する実践型人材育成プログラム「シェアプロ」を実施しています。
今回のイベントでは、企業人材の「レンタル移籍」事業を展開するローンディールを創業し、現在は一般社団法人越境イニシアチブ代表理事を務める原田未来さんを迎えました。そして、原田さんと本年度・昨年度のシェアプロ参加者や企業の人事担当者らがディスカッションをしながら、企業が越境研修に社員を派遣する価値・効果、エンゲージメントの変化など、人材育成にとどまらない「越境」の価値を考えました。
1977年生まれ、千葉県出身。立教大学文学部卒業。大学院大学至善館修了、MBA(経営学修士)。
2001年、株式会社ラクーン(現ラクーンホールディングス、東証プライム)入社。部門長職を歴任し同社の上場に貢献。2014年、株式会社カカクコムに転職し、新規事業開発。自身の経験から「会社を辞めずに外を見る経験」の重要性に気づき、「レンタル移籍」事業を構想。
2015年に株式会社ローンディールを創業、NTTグループ・トヨタグループ各社・官公庁など、大企業のべ150社が活用する越境のプラットフォームを構築。経団連スタートアップエコシステム変革タスクフォース、経済産業省の人材流動化促進政策等の委員を務める。2025年にローンディール代表を退任し、より広く「越境を社会に実装する」ために一般社団法人越境イニシアチブを設立。著書に『越境人材---個人の葛藤、組織の揺らぎを変革の力に変える』(英治出版・2025年9月)。
未知からの学びをホームに持ち帰り、何をするか
イベントの最初に、原田さんからお話ししていただきました。
原田さん:
今日は「越境」がどのような可能性を持っているのか、皆さんと一緒に話しながら考えていきたいと思っています。
「越境」という言葉のとらえ方は皆さんそれぞれ違うと思いますが、今回は次のようにそろえてはどうかと思います。
「越境」、学術的に言うと「越境学習」は「ホームとアウェイを往還する(行き来する)ことによる学び」と定義されています。(『越境学習入門』(石山恒貴、伊達洋駆)より)
皆さんが普段働いている場所から一歩出ると、さまざまな未知なものに出会います。
例えば、学校に通うと、普段触れているのとはまったく違う科目を学んだり、さまざまなことを研究している人たちに出会います。
また、さまざまなプロジェクトに参加すると、普段とは違う人と接点を持ち、議論をします。まさに今日、ここに皆さんが集まっていることも越境経験になりますね。
もしくは出向や副業、プロボノ、今回のシェアプロのように、実際に事業を行っているところの中に入って行って実践をする形もあります。
あるいは、プライベートで、推し活や地域のPTA活動、お祭りなどに関わり、ビジネスパーソンとは違う人たちと一緒に何かをすることもあると思います。
こういった未知の世界が、実は学びになっていると考え、その学びを持って帰ることに人材育成への期待があり、越境はこの10年ほどで盛んになってきました。
つまり、越境は「未知から学びましょう」というのが一つの側面ですが、その本質として「ホームに帰ってくる」「何を持って帰ってくるのか、戻ってきて何をするか」ということも大事だと考えています。
持って帰ってくるものはおそらく、ホームでは異質なものになるので、なかなか受け入れられないこともあります。ベンチャーに行ってさまざまなことを学んで帰ってきても、周りから「ベンチャーかぶれ」と言われることもよくあります。そのために、ハレーションが起きるのです。
ただ、そのハレーションから何かを変えていったときに、組織自体の変化なども起こってくるのだと思います。
このように、図の矢印で表した「ぐるっと回ってくる」ということを意識していただけると面白いのではないかと思います。
こうしたことを踏まえて考えると、越境には、個人の人材育成、キャリア自律という効果もありますし、企業にとっては、越境研修に行って帰ってきた人が、組織を変えたり、イノベーションの種を持って帰ってきたりするという効果があります。
そして今回のシェアプロでは地域に越境することで、普段地域の中にはいないような人や企業との共創が起こり得ます。
そして、こうした取り組みによって最終的に、これまでのような転職や移住とは違う形での人のつながりが、社会の中に生まれていくと考えられます。
このように、さまざまなところに影響を及ぼしながら「越境」が広がっていった先には、どんな世界が待っているのでしょうか。そういったことを、今日は皆さんと一緒に議論できればと思います。
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