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ふるさと兼業

名古屋市の食品会社・山眞産業(株)花びら舎の常務を務める上田泰平さんは、「おためしCXO」を通じて地域企業と副業的に関わり、DX推進や財務体質の改善に取り組んできた。大手企業勤務を経て中小企業の経営に携わる上田さんにとって「おためしCXO」は、副業から始まる関与を通じて、経営課題への理解を深め、後継者不足に悩む地域企業と人材をつなぐ実践例となっている。

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ふるさと兼業「おためしCXO」とは

 

中小企業の経営者の高齢化や後継者不足が進む中、後継者の育成や円滑な事業承継は、地域経済を支える上で避けて通れない課題となっている。国もさまざまな支援策を打ち出しているが、現場では「承継したいが方法が分からない」「引き継げる人材に出会えない」といった声が少なくない。

こうした状況を受け、NPO法人G-netでは、親族外承継や事業の切り出しによるCXO人材の参画という新たな選択肢を探る取り組みとして「おためしCXO」を進めている。いきなり承継やM&Aに踏み切っても、企業が大切にしてきた組織風土や経営戦略まで引き継がれるとは限らず、その難しさから廃業を選ぶ企業も多いのが実情だ。

そこでG-netは、外部人材とプロジェクトベースで協働しながら、互いの価値観や考え方をすり合わせ、段階的に事業の中核を担っていく仕組みとして「おためしCXO」を立ち上げた。3か月間の兼業プロジェクトを通じて、承継をキャリアの一つの選択肢として探っていく取り組みである。

 

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Profile

上田泰平(うえだ・たいへい)

2013年、大学卒業後、NTT西日本に入社、営業部門で関西私鉄グループを担当。その後デジタル改革推進部にて、NTTグループ各社のDX施策を推進。2024年より山眞産業へ転職。前職で培ったノウハウを活用した社内ITインフラの構築・DX推進と地道な財務体質改善により、着実に業績を改善。今後は農業分野への参入で既存サプライチェーンの再構築し、中長期的な事業継続と産地育成を目指している。

 

山眞産業株式会社花びら舎について

山眞産業株式会社花びら舎
所在地(本社):愛知県名古屋市西区花の木 2-12-10

代表取締役:平出 眞

創業: 1955年9月

資本金:2,000 万円

売上高: 15 億 7,500 万円(2024年8月期)

URL:https://www.yamashin-sangyo.co.jp/

1955年創業の食品メーカー。桜餅の素材となる桜葉漬・桜花漬を起点に、桜加工食材の製造と卸売を行う。

伝統食材を活かしながら、洋菓子向けの新たな桜素材を開発し、「桜スイーツ」という市場を創出。

現在ではサクラスイーツ用桜素材でトップシェアを誇る。

創業品目であった寒天卸から始まり、時代とともに事業を変化させてきた同社は、今を第二創業期と位置付け、桜に続く四季折々の花や地産果実を活かした新たな食文化創造に挑戦している。

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大企業の営業職からローカル企業の後継者に

本文山眞産業株式会社花びら舎(以下、山眞産業)は、愛知県名古屋市に本社を構え、和洋菓子に使用される桜葉・桜花などの加工および和洋菓子材料の卸売りを手掛ける企業だ。

同社の常務取締役を務める上田泰平さんは、2025 年に 35 歳の若さで現社長である3代目経営者の平出眞さんから経営権を受け継ぐ予定で、山眞産業のさらなる成長と発展のために東奔西走する日々を送っている。

そんな上田さんだが、実は平出社長の親族でもなければ、同社のプロパー社員ですらない。

山眞産業に入社したのはわずか2年前の2024 年。

前職はNTT西日本の営業畑を中心に食品製造業の山眞産業とは縁もゆかりもないキャリアを歩んできた。

日本でも有数の大企業の社員だった上田さんが、血縁上でも仕事上でも何の関りもない、規模も売上高もNTT西日本とは比較にならないほど小さなローカル企業の後継者になぜなったのか。

 

上田さんはその経緯を次のように語る。

「そもそものきっかけは、平出社長の息子さんと大学の弓道部で知り合い、友人関係になったことでした。彼は医学部を出て医師になったのですが、大学卒業後も連絡を取り合い、互いの仕事の話などもざっくばらんにするような間柄でした。もう7、8年前になるでしょうか。ある日、彼から唐突に『父親の会社を継いでくれないか』と持ち掛けられたのです。そこから、山眞産業との関りが生まれました」

 

 

地方創生や社会課題の解決に興味を持つ

 

上田さんはもともと地方創生や社会課題の解決に興味があり、NTT西日本に入社したのも同社が地方創生を推進していたことが大きな決め手となっていた。

後継者不在により事業存続が困難に陥るローカル企業が少なくないことは、当時からすでに社会問題になっており、上田さんも少なからず関心を持っていた。

加えて、生まれ育った西尾市と同じ愛知県の企業ということにも親近感も覚えた。

そうした背景もあって、後を継ぐかどうかはともかく、上田さんはとりあえず社長に会って話を聞いてみることにする。

「社長とひざを突き合わせてじっくり話し合う中で確信しました。山眞産業の事業は世界シェアを本気で狙える――と思いました」山眞産業で新たなチャレンジをしよう。

上田さんはそう決意を固める。

とはいえ家族の賛同も得ぬまま、いきなりNTT西日本を辞めて転職というわけにはいかないどうしたものか 。

……そんなときに知ったのが平出社長の紹介で知ったのが、「ふるさと兼業」の「おためしCXO」の活用だった。

 

 

「おためしCXO」を活用事業承継へつないでいく

「ふるさと兼業」とは、特定非営利活動法人 G-net が運営するプラットフォームであり、愛する地域や共感する事業にプロジェクト単位でコミットできるよう支援を行っている。

そのプロジェクトの一つが「おためしCXO」で、ふるさと兼業による副業から段階的に関わりを深め、事業承継につなげることを目指している。

渡りに船とばかりに早速「おためしCXO」による山眞産業での副業を始める上田さんだが、それからほどなくして思わぬ窮状に陥ることになる。

新型コロナウイルスのパンデミックを機に低迷し続けていた山眞産業の業績がいよいよ危険水域に達しつつあったのだ。

「このままでは倒産も免れない。この窮地から抜け出すには、自分が山眞産業の後継者として全身全霊で経営の立て直しに取り組むしかない」そう考えた上田さんは兼業を本業に換えることを決断する。

NTT西日本を退職して、山眞産業に入社したのだった。

平出社長から正式に後継者として迎え入れられた上田さんは、手始めに不採算事業の整理にとりかかる。

「長年に渡って積極的に事業の拡大を行ってきた結果、製造する商品の種類が企業規模に見合わないほど膨大な数に上っていました。そこで売上実績などをもとに取捨選択を行うことにしたのです。最終的におよそ 60 品目の商品を廃止するに至りましたが、それによって財務体質はずいぶん改善しました。」

並行して、上田さんはNTT西日本時代にグループ各社のDX推進に携わったノウハウを活かし、老朽化していた社内のインフラの入れ替えやDX推進にも力を注いだ。

 

こうして事業のスリム化、業務の効率化を進めたことで、業績は徐々にではあるが改善の兆しを見せつつあるという。

加えて、経営者として将来の成長に向けた新たなビジョンを示すことも怠らなかった。

それが「すいかソース」の開発だ。

「新規採用した若手社員の発案で、すいかソースが生まれました。実はすいかを主原料にしたソースはそれまでどの企業も手掛けていなかったものです。開発できれば新たな市場を開拓できるのが魅力でした。それだけでなく、開発を担当した若手社員たちに成功体験を積ませたいという思いもありました。さらには、いかに付加価値を生み出すかという今後の開発方針を示す狙いもあったのです。」

 

こうして誕生したすいかソースはECサイトを中心に評判を呼び、同社にとって久々のヒット商品となった。

山眞産業の経営に本格的に携わるようになってわずか2年足らずで経営状況を大きく改善し、新商品の開発も成功させた。

経営者として順調な滑り出しを見せている上田さんだが、いまだ解決できていない大きな「難問」がまだ一つ残っているという。

「家族の説得です(笑)。NTT西日本を辞めて山眞産業の経営者となることは、実は私の独断で決めたことで家族の賛同を得ていません。とはいえ、これは山眞産業をより魅力的な企業へと成長させることで解決できると信じています。つまり、これからの私の努力次第ということ。むしろ仕事へのモチベーションをかきたてる原動力になっているくらいです。」

 

この難問が解決される日が訪れるのも、そう遠くなさそうだ。

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