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「兼業だから、やってみたいと思えた」〜プロジェクト事例・兼業実践者編<青荷温泉>

「兼業だから、やってみたいと思えた」〜プロジェクト事例・兼業実践者編<青荷温泉>

「自分の経験やノウハウを活かして、地域、ふるさとの役に立ちたい」と思っている人が、都会や遠く離れた場所に、実は、たくさんいるのかもしれない。今回、プロジェクトに参加した実践者たちがそう思わせてくれました。

 

移住ができなかったり、本業をやめるまでに至らなかったり。さまざまな事情や想いを抱える、プロフェッショナルから学生まで。職業も住む地域もバラバラな人たちが、「青荷温泉」「兼業」というキーワードに惹かれて、今回のプロジェクトに集結したのです。

 

兼業だからこそできた、唯一無二の体験や、感じられたやりがいとは? 実践者2人から話を伺いました。

 

■~旅×働く~ テレビもなくスマホもつながらない錦秋の秘湯で、非日常に浸る

下界とは約6㎞ほど離れた、青森県八甲田山中にある部屋数30ほどの一軒宿「青荷温泉」。ここには、四季折々の自然を楽しめる4つの湯があります。「ランプの宿」として知られ、全国各地や海外からも、旅行客が訪れます。

ネット環境がほとんどないという異次元の世界で、17人のスタッフが働いています。

 

■兼業というスタイルに魅力を感じて

佐藤大介さん
神奈川県在住。「星野リゾート青森屋」総支配人として旅館を再生させるなど、数々の実績から、「リゾート再生請負人」とも呼ばれている佐藤さん。現在も、さまざまな肩書きで多忙な日々を送るなか、今回のプロジェクトに手を挙げてくれました。

 

このプロジェクトは、弘前市の職員である知り合いが、SNSにふるさと兼業のホームページをシェアしていたことで知りました。

 

私は以前、青森県三沢市の「星野リゾート青森屋」という旅館に5年間いました。同じ青森県にある青荷温泉は、とても魅力的なお宿であると聞いていながら、行ったことがなかったんです。ですので、プロジェクトの活動先が青荷温泉だとわかったとき、すぐに行ってみたいと思いました。しかも、スポットで関わることができる。これが転職や移住ならできませんでしたね。青荷温泉への魅力、そして、私の経験が役にたつかもしれないという想い。それを、今の仕事を続けながらでも実現できる、ふるさと兼業というスタイルにもとても価値を感じたんです。

 

自分の経験やノウハウを活かして、青荷温泉を守りたい。私のような立場でも参加できるのならと、手を挙げました。

 

■得意分野を活かして自分なりの支援を

地方にはキラリと光る素敵な旅館がたくさんありますが、それでも、お客様が減ってしまうということがあります。なぜそういう状況になっているのかわからないところに、町医者といいますか、最初のお医者さんのような立場で診断してあげることが、これまで経験を積んできた私の役割だと思っています。今回のプロジェクトでも、その役割を買って出ました。全体を俯瞰的に見て、マーケティングや経営の観点を持って。経営者としての立場からできるお手伝いですね。

ほかの実践者の方たちや、社長とお話をして、課題を整理し、私なりに課題の解決方法を見出しました。今回のプロジェクトの目的のひとつは「情報発信」ですが、表向きのミッションが「情報発信でお客様を増やす」のであれば、裏ミッションは「課題を見つけること」だと思います。社長のリクエストを超えたお手伝いができたら嬉しいですね。

 

■宿を支え守ることが、自分にとってやりがい

私は、クリエイターのように物事を一から起こすのではなく、誰かが作ったものをよりよくアレンジする、そういう立場として、物事に携わりたいという想いを持っています。青森屋や、ほかのこれまでにお手伝いをしてきた旅館で学んだことをもとに、展開していく。今回の青荷温泉で学んだことも吸収して、どんどん広げていくことで、これからにつなげていくこともできるんじゃないかなと。

このプロジェクトに私が何か求めたとすれば、それは、お金ではなく、やりがいです。青荷温泉は絶対に守らなければいけない素晴らしいお宿ですし、日本だけでなく世界に伝えていくということもぜひやっていきたい。まずは、私がお伝えできることで、手を入れられるところから変えていければ。守りたいものを守っていくことができたとき、このプロジェクトに参加した意義があったと、感じられると思います。

 

■運命を感じたプロジェクト

沓掛麻里子さん
東京都在住。旅行会社に十数年勤め、ツアーの添乗員として、さまざまな観光地をまわるうちに、温泉に魅了されたそう。全国47都道府県、膨大な数の温泉地を訪れた記録をブログに記し、温泉に関するさまざまな資格も取得しています。現在はホテルで働きながら、新たな活動を模索中。そんななか、ふるさと兼業の取り組みを見つけます。

 

私は青森県の板柳町出身です。東京で10年以上続けた旅行関連の仕事に区切りをつけて、これからどうしようかと思っていたときでした。旅行好き、温泉好きを活かせる何かを探しながら、なかなか見つからずにいたなかで、SNSの広告でふるさと兼業のことを知ったんです。

いつか帰りたいと思っているふるさと「青森」。そして、ライフワークになっていた「温泉」。この2つのキーワード、すごくいいかも、と運命のようなものを感じました。

青森の観光に役立ちたいという想いを漠然と持っていた私にとって、東京にいながらこのような取り組みに参加できることが、とても魅力に感じて。迷わず応募しました。

 

■自分のキャリアや経験を棚卸しできるきっかけに

青荷温泉には、プライベートでも添乗員としても来たことがありましたが、お客様を受け入れる側になったのはもちろん初めてです。一番感じたことは、これまでお客として私が当たり前に受けてきたサービスは、従業員の方たちの大変な苦労の上で成り立っていたんだということでした。

例えば、配膳。多いときはお客様が70人も80人もいらっしゃるなか、座敷での御膳の準備だけでも大変な労力を使います。それから、掃除は電気が使えないため、箒と塵取りで行います。約30室を電気の力なしで隅々まで綺麗にすることも、とても大変だと思いました。

添乗員を辞めるときに、周りから「今まで積み上げたキャリアがあるのにもったいない」と言われたんです。それでも私は「このくらいのキャリアを持つ人なんて5万といる」と思っていたのですが、今回この取り組みで、自分が前職で経験してきたものがあるからこその目線で、意見を出せた」と、自分の積み上げてきたことを実感することができたんです。

働いてみて、東京ではほとんど使うことのない、自分の故郷のことば(津軽弁)を使って仕事ができることにも楽しさを感じましたね。リアルに青森に貢献できている気持ちを味わえました。

お客様が宿に到着して、ランプを見て感激する姿を見ると、本当にこの環境に憧れて訪ねてきたんだなあと思うんです。全国各地、海外からも、ここを調べてやってくるってすごい。こういう感想をこれから発信していくこともまた、ミッションのひとつですね。

 

■反響、これからに期待

宿で働くという体験を得たことは、生きていくうえでとても貴重なことでした。人として、おもてなしの心を学ぶことができましたし、仕事面では今後ブログを書くうえでも、視点が変わってくると思います。泊まることにすごく感謝するようになりましたから。

それから、このプロジェクトが新聞に出たことがきっかけで、温泉のセミナーでお話する機会をいただきました。青森を元気にしたいという気持ちに共感してくれた地元の友人から応援の言葉をもらったり、つながりが増えたり。今後の活動を考える、いいきっかけになりました。

 

■プロジェクトの締めくくりに向けて作戦会議

佐藤さん、沓掛さんを含むプロジェクト参画メンバーで、締めくくりとして、社長に課題をフィードバックするための作戦会議を開きました。
実際に現場の作業を経験した沓掛さんたちの話を聞き、佐藤さんが経営者の視点を加えて、「ランプの宿働き方改革推進提案」をまとめます。

会議は想像以上にヒートアップ。青荷温泉が抱える問題が少しでもよくなるようにと、真剣に意見を交換していました。
社長への提案が終わると、無事任務終了です。皆それぞれの場所へと帰っていきました。

 

■青荷温泉と兼業者たちの未来がスタート!

スマホがつながらない環境下。
テレビも電灯もない、非日常的な生活。
本物の自然とじっくり向き合える場所で過ごした、格別の体験。

きっとこれから、実践者たちが発信してくれることでしょう。

実践者たちは、今後も東京でディスカッションの機会を設ける予定だそう。宿側で検討した結果もフィードバックされます。

任務終了で関係が終わることはなく、プロジェクトをきっかけに、青荷温泉に関わる人が増えていく。青荷温泉と兼業者たちの未来は、ここからがスタートです!

<クレジット>

※本記事はNPO法人G-netが経済産業省「令和元年度地域中小企業人材確保支援等事業(中核人材確保スキーム:横展開事業)」の補助を受けて作成しています。