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3ヶ月限定のパラレルワーク!富士ゼロックスに学ぶ、兼業・副業時代に向けた企業側の役割とは(後半) | ふるさと兼業

3ヶ月限定のパラレルワーク!富士ゼロックスに学ぶ、兼業・副業時代に向けた企業側の役割とは(後半)

3ヶ月限定のパラレルワーク!富士ゼロックスに学ぶ、兼業・副業時代に向けた企業側の役割とは(後半)
なぜ富士ゼロックス株式会社は期間限定パラレルワークの研修プログラムを導入したのか?インタビュー前半では「シェアプロ」導入の目的や期間中のメンバーの様子などをお話いただきました。後半も仕掛け人である富士ゼロックス株式会社の三木さん・安田さんにお話を伺います。

 

−参加されたメンバーの皆さんにとっては、すごく貴重で刺激的な体験だったんですね。逆に、受入企業側にはどんな価値があったと思われますか?

 

三木 どの企業様もおっしゃられていたのは、「会議の進め方やプロジェクトの進め方が全然違う」ということですね。すごく新鮮で勉強になったと。普段当たり前にやっているために評価されないことでも、世の中では通用するし、喜ばれるということは、メンバーの自信になったと思います。あと、当社の納期意識の強さにも驚かれましたね。

 

三木 祐史
日本生命、リクルートでの営業・マーケティング・商品企画を経て、2010年に富士ゼロックス株式会社に入社。2015年より人材開発として20代-30代を対象とした次世代リーダー育成プログラムの企画推進リーダーに着任(現在はシンガポール駐在中)。プライベートは一般社団法人マツリズムの駆け出しマツリテーターとして各所の祭りに参加し、伝統的な祭りの魅力を組織開発やリーダーシップ開発に活用するビジネス展開を模索中!

 

安田 例えば、藤塗装工業株式会社さんは自動車会社から依頼された部品の塗装を一定の品質で納品するということをされてきた企業です。藤塗装工業のプロジェクトは、塗装という技術を使って自社ブランドの商品を持つということに挑戦するというものでした。だけど、商品開発のノウハウをほとんど持たれていなかったんです。そのプロジェクトへ参加したのがうちの技術職のメンバーだった。そこで、普段業務の中で当たり前にやっていることは当たり前じゃないんだ、ということに気づくんですね。

 

自分が今会社でやっている商品開発業務1つ1つがすごく意味のあることなんだなと、外から見てはじめて理解できた。それは自己効力感につながったようです。そうやって作った商品が、碧南市の姉妹都市に贈られる品になったり、ふるさと納税の返礼品に検討されたりというのも嬉しかったと思います。

 

安田 勇大
2004年プロ市場向けプリンターの専門SEとして富士ゼロックス株式会社へ入社。2013年システムコンサル営業へ転向し事業拡大に従事する傍らで組織開発や組織コミュニケーションの変革を目指す自主的な社内外活動を展開。2017年営業生産性強化センターへ異動し次世代の経営を担うリーダー育成プログラム「Future Leaders Challenge Program」の企画運営に携わる

 

−私たちが(G-netの)コーディネーターから聞いた受入側企業の価値も、この場を借りてお伝えしたいです。受入側の中小企業の社員は、富士ゼロックスのひとりひとりのメンバーが持つ専門性はもちろん、業務管理、仕事の進め方などひとつひとつに刺激を受け、学んでいました。「尊敬できる先輩が、期間限定で現れたイメージ。」そんな風に話していたそうです。

また、受入企業にとっては事業的な成果も非常に大きかったようです。たった3ヶ月という期間で、これまで具体化していなかった商品のマーケティング戦略が明確になったり、具体的な連携先や提携先の獲得に繋がったりと、目に見える成果を生み出していました。社員の育成や組織文化にも影響が出ていたという経営者の声も多かったです。

 

藤塗装工業株式会社 シェアプロメンバーとの商品開発会議

 

−終了後、メンバーに変化はありましたか?

 

三木 現業へのモチベーションが上がるメンバーが多かったですね。外に出てみると、自分がいかに恵まれているかに気づくことができるんです。契約に関する事務手続き1つとっても、仕組みがあることの背景や意味が理解できたみたいで。でも、外にでたことでモチベーションがあがるというのは、想像以上の反応でした。

 

安田 はじめてリアルに他の会社のビジネスに直に触れるというメンバーが多くて、新鮮さを感じていましたね。今現業で実際に自分が担当しているクライアントに対しても、そこにビジョンがあって、経営があって、人が働いているんだということを実感することができたようです。

 

三木 業務後にリモートワークをしていたので、仕事の効率化ということも意識が変わったと思います。

 

安田 G-netが準備してくれていたオンライン会議ツールのZoomが大変使いやすかったというのは大きいと思いますね。音声は途切れないし、自然に会話をしている「感覚」を工夫しているツールなので。まだまだ全社的にはオンライン会議は多くないですが、このプロジェクトに参画した者同士はZoomやチャットツールでやりとりしています。

 

もちろん、リアルでも会っておくことは重要です。人柄や身長などのその人が本来持つ「雰囲気」は、なかなかオンラインでは伝わりませんからね。だけど、個人作業を進めるためにタスクを明確にするなどは、オンライン会議で十分可能だと分かりました。

 

三木 それから、営業から企画へとか、開発から営業へなど、社内でキャリアチェンジを考えるメンバーも増えてきました。「0からビジネスを創れる」「会社を通じて社会に価値提供できる」という実感を持てたことが大きかったと思います。言われたことをやる世界から、なんか世の中に作りたいなと「企む」気持ちがでてきたんでしょうね。FLCPの最後には実際に事業提案もするので、着地もうまくいったと思います。

 

株式会社モールデック 社長とインターン生、シェアプロメンバー

 

―「シェアプロ」や「ふるさと兼業」のようなローカルプロジェクトに関わる価値について、どう思われますか?

 

安田 シェアプロに参加したほぼ全てのチームが、コンセプト開発から販売・納品まですべて自分たちで決めてやりきることができたことですね。分業制の組織ではなかなか経験できない、大変貴重なことです。商品・サービスの裏のコンセプトやストーリーなどの「文脈」まで理解して販売する。そうすると、その商品・サービスにかける情熱や理解度も当然大きくなりますよね。おそらく、彼ら自身が自分たちの中にある「情熱」や「やりきる力」に気づくことができたと思います。

 

三木 今回参画させていただいた企業様は、想定以上に「社会性」の高い事業をされていました。すでに基盤事業がしっかりしているから、「地元のために何かしたい」とか「こういう課題を解決したい」とかそういうところでプロジェクトを組んでいらっしゃる企業が多かった。対象先は重要ですから、G-net がビジョンを持った会社を選ばれているんだろうなと思いました。

 

社外フィールドに出る研修はこれまでも取り組んできたのですが、「あぁ凄かった。でも何もできなかった。」という経験で帰ってきてしまっては意味がないんです。ビジネスを通して社会貢献ができる感覚を持って帰ってきてくれないと、愚痴を言う人になってしまう。

 

安田 例えば、藤塗装工業株式会社さんは「碧南という場所にあるということを強みにしたい」という思いがあったし、山眞産業株式会社さんは「名古屋に桜の名所を作りたい」という大きな目的をもってやっていました。「自分たちの会社が社会になぜ存在しているのか」という答えをしっかりと持っている会社がシェアプロ企業に参画されていたんです。だからこそ、ビジネスで社会へ貢献するという考え方が当社のメンバーの中にしっかりと実感として残って、自分たちの能力に転化されている形になったことが凄く良かったと思いますね。

 

シェアプロ全体キックオフの懇親会

 

三木 大企業が社員をローカルプロジェクトに送り出す意味・意義は、社会を捉えることや、社会とビジネスをつなげることにあります。それは、ビジネス全体を体験できる中小企業のほうが体感しやすいんですよね。それがシェアプロの大きな価値だと思っています。

 

―ありがとうございます。メンバーの皆様が、シェアプロを通して変容されていった様子が伝わってきました。社会性の高い事業に関わることがビジネスの面白さを知ることができるというのは「ふるさと兼業」でも体感してもらえる要素かなと思います。

 それでは最後に、来たる兼業時代における企業側の役割について、お二人のお考えを教えてください。

 

三木 インタビューでの冒頭でもお話ししましたが、大企業の兼業が進まない理由は「自信がないから」。分業制でビジネス全体を見れていないからなんですね。「シェアプロ」や「ふるさと兼業」など、ローカルプロジェクトを利用することで、この問題を解決できると思っています。むしろ、研修に組み込む必要もないかもしれませんね。

 

企業側が機会を提供すること自体が重要なので、こういうプロジェクトを社員に紹介するだけでも良いと思います。ただ、振り返りとフィードバックは必ず実施すべきです。やらせっぱなしではなく、終了後はメンバーに内省させ、学んだことを普段の仕事と結びつけていくという時間は必要なんですよね。

 

安田 社内での役職や役割という「枠」があることで、社員の可能性を伸ばしきれていないということもあります。それによって「守られている」というのも事実ですが、新しいビジネスを創れる人材を育成していくとなると、「枠」を取っ払って思いっきりやるという経験も必要です。視線を社会に向けるというのは、当社でも大切にしてきた考え方です。日々の仕事の中でなかなか目の前のことしか考えられなくなる瞬間もあるけれども、社員教育に携わる我々としては絶対に外してはいけない軸だと思っています。

 

<前半はこちら>

 

富士ゼロックス株式会社 安田さん(左)と三木さん(右)

 

お話を聞いて

「副業解禁」になり、企業の一番の不安は「人材が流出してしまうのではないか」ということだと思います。しかし、これからの時代に企業が取り組むべき役割は、「副業解禁」の機会を前向きに捉えて、一人ひとりの「情熱」や「やりきる力」を引き出す機会を与えるために変革していくことなのかもしれません。大企業の強みは、会社を通じて社会に「大きな」価値提供をしやすいということ。そこに個々の「情熱」や「やりきる力」が加われば、社会とビジネスをつなげることができるんだとワクワクしました。本業に良い影響を与え、より本業が楽しくなる、そんな副業の取り組みができるローカルプロジェクト。働き方の選択肢の一つとして広がっていくと良いなと思いました。

安田さん、三木さん、貴重なお話しをありがとうございました!

 

編集部紹介
ふるさと兼業 首都圏プロモーションチーム

赤嶺 健
(インタビュー・インタビュー時撮影・ライティング)

小路 悠佳
(インタビュー・ライティング・記事編集)